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駐在員必見!外国税額控除(FTC)vs 外国勤労所得控除(FEIE)どちらを選ぶべき?:日本企業から給与をもらっている人が直面する選択。日本で払った税金をアメリカで引くか(FTC)、所得を除外するか(FEIE)のシミュレーション。

駐在員必見!外国税額控除(FTC)vs 外国勤労所得控除(FEIE)どちらを選ぶべき?:日本企業から給与をもらっている人が直面する選択。日本で払った税金をアメリカで引くか(FTC)、所得を除外するか(FEIE)のシミュレーション。

アメリカの居住者として、日本企業から給与を受け取っている場合、アメリカと日本の両方で税金が課される「二重課税」の問題に直面することがあります。しかし、米国税法にはこの二重課税を軽減するための重要な制度が二つ存在します。それが、「外国税額控除(Foreign Tax Credit: FTC)」と「外国勤労所得控除(Foreign Earned Income Exclusion: FEIE)」です。

どちらの制度を利用するかは、個々の状況によって最適な選択が異なります。今回は、特に日本企業から給与を受け取っている駐在員の方々が、どちらを選ぶべきか、具体的なシミュレーションを交えて解説します。

外国税額控除(Foreign Tax Credit: FTC)とは?

外国税額控除(FTC)は、海外で支払った所得税を、アメリカの連邦所得税から直接差し引くことができる制度です。これは「税額控除」であり、課税所得から引かれる「所得控除」とは異なり、算出された税金そのものを減額する効果があります。

  • メカニズム: 日本で支払った所得税(および住民税の一部)を、アメリカで支払うべき所得税からドル・フォー・ドルで控除します。
  • メリット: 二重課税を効果的に回避できます。特に、日本の税率がアメリカの税率と同等かそれ以上の場合に有利になることが多いです。
  • 注意点: 控除できる金額は、アメリカの税法に基づいて計算された外国源泉所得に対するアメリカの税額を上限とします。使い切れなかった控除額は、過去1年、または将来10年間にわたって繰り越すことが可能です。

外国勤労所得控除(Foreign Earned Income Exclusion: FEIE)とは?

外国勤労所得控除(FEIE)は、海外で得た勤労所得のうち、一定額をアメリカの課税所得から除外(非課税化)できる制度です。これにより、アメリカの課税所得を大幅に減らすことが可能です。

  • メカニズム: 毎年定められた上限額(2023年では$120,000)まで、海外での勤労所得をアメリカの課税対象から除外します。これに加えて、住宅費控除(Housing Exclusion/Deduction)を併用することも可能です。
  • 適用要件: 「ボナファイド居住者テスト(Bona Fide Residence Test)」または「物理的滞在テスト(Physical Presence Test)」のいずれかを満たす必要があります。
  • メリット: 課税所得自体が減るため、アメリカでの税金計算がシンプルになる場合があります。特に、海外の税率がアメリカの税率よりも低い場合や、所得が控除上限額に近い場合に有利です。
  • 注意点: FEIEは連邦所得税にのみ適用され、多くの州税には適用されません。また、FEIEを選択すると、その他の特定の控除や優遇税制が制限される場合があります。

どちらを選ぶべきか?:日本企業から給与をもらっている駐在員のシミュレーション

それでは、具体的なシミュレーションを通じて、FTCとFEIEのどちらが有利になるかを見ていきましょう。

シナリオ設定

駐在員Aさん(既婚、夫婦合算申告、子供なし)のケースを想定します。

  • 年収: $150,000 (日本企業からの給与)
  • 日本で支払った所得税・住民税: $30,000
  • 米国居住: カリフォルニア州
  • 住宅費: 年間$36,000
  • 仮定する米国連邦税額: 課税所得に応じ変動しますが、ここでは概算として、FTC適用前で$30,000の連邦税が発生すると仮定します。(この例はFTCが有利になるケースとして設定しています)

FTC(外国税額控除)を選択した場合

  • 米国課税所得: $150,000 (給与全額が対象)
  • 仮定する米国連邦税額: $30,000 (FTC適用前)
  • 適用される外国税額控除: $30,000 (日本で支払った税金。ただし、米国税額を上限とする)
  • 最終的な米国連邦税額: $30,000 – $30,000 = $0

この場合、日本で支払った税金がアメリカでの税金と同額かそれ以上であったため、アメリカでの連邦税はゼロになります。

FEIE(外国勤労所得控除)を選択した場合

  • FEIE控除額(2023年): $120,000
  • 住宅費控除額:
    • 基準住宅費:$120,000 × 16% = $19,200
    • 実際の住宅費:$36,000
    • 控除可能額:$36,000 – $19,200 = $16,800(上限あり)
  • 合計控除額: $120,000 (FEIE) + $16,800 (住宅費控除) = $136,800
  • 米国課税所得: $150,000 – $136,800 = $13,200
  • 仮定する米国連邦税額: $13,200に対する税金(例:10%と仮定) = $1,320

この場合、課税所得は大幅に減りましたが、日本で支払った税金はアメリカの税金計算に反映されません。

シミュレーション結果の比較と考察

上記のシミュレーションでは、FTCを選択した場合の米国連邦税が$0、FEIEを選択した場合が$1,320となりました。このケースでは、FTCが有利という結果です。

この結果は、日本の税率(または支払った税額)がアメリカの税率よりも高い、または同程度である場合に多く見られます。日本で多額の税金を支払っている場合、それをアメリカの税金から直接差し引くFTCの方が効果的であることが多いのです。

一方で、もし日本の税率が非常に低い、あるいは所得がFEIEの控除上限額に収まるような場合は、FEIEの方が有利になる可能性もあります。例えば、年収が$100,000で日本での税金が$10,000の場合、FEIEで全額除外できれば、アメリカの連邦税はゼロになります。

選択のポイントと注意点

どちらの制度を選ぶべきかは、以下の要素を総合的に考慮する必要があります。

  • 日本の税率と米国の税率の比較: 日本で支払う税金が米国で課される税金よりも高い場合、FTCは非常に強力なツールとなります。
  • 居住地の州税: FEIEは連邦所得税にのみ適用されるため、カリフォルニア州のように高額な州税がある場合、州税の計算にはFEIEが使えず、所得全体に課税される可能性があります。FTCは州税にも適用できる場合があります。
  • 将来の税額控除の繰り越し: FTCで使い切れなかった控除額は、将来の年度に繰り越して利用できます。これは長期的な税務計画において重要なメリットです。
  • ソーシャルセキュリティ税・メディケア税: FEIEを選択しても、自営業者(Self-Employed)の場合、これらの税金(SE Tax)は免除されません。会社員の場合は通常、米国でこれらの税金は発生しません。
  • その他の控除・優遇税制: FEIEを選択すると、教育費控除や扶養控除など、他の税額控除や所得控除が制限される場合があります。

結論:専門家への相談が不可欠

FTCとFEIEの選択は、個人の年収、家族構成、日本での納税額、アメリカでの居住州、そして将来の税務計画によって大きく異なります。誤った選択は、不必要な税金の支払いや、税務調査のリスクにつながる可能性があります。

複雑な米国税法を理解し、ご自身の状況に最適な選択をするためには、米国税理士(Enrolled Agent)や公認会計士(CPA)といった税務専門家へのご相談が不可欠です。

弊社では、駐在員の皆様の税務申告をサポートしております。ご自身の状況でどちらの制度が有利になるか、具体的なアドバイスが必要な場合は、どうぞお気軽にお問い合わせください。最適な節税対策を共に検討し、安心して米国での生活を送れるようお手伝いいたします。

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