2025年版TurboTaxとH&R Block徹底比較:日本人に使いやすいのはどっち?
アメリカでの確定申告は、多くの日本人にとって複雑で負担の大きいプロセスです。特に、海外からの収入や資産を持つ場合、その複雑さは一層増します。しかし、TurboTaxとH&R Blockという二大税務ソフトウェアは、このプロセスを大幅に簡素化するための強力なツールとして広く利用されています。2025年版(2024年度の申告)に向けて、これらのソフトウェアがどのように進化し、特に日本人ユーザーにとってどちらがより適しているのかを、専門的な視点から徹底的に比較・分析します。
基礎知識:アメリカの確定申告と税務ソフトウェア
アメリカの税制は連邦税と州税に分かれ、それぞれに異なる申告義務があります。IRS(内国歳入庁)が管轄する連邦税申告は、全ての納税者にとって必須であり、多くの州でも州税の申告が必要です。税務ソフトウェアは、W-2(給与所得源泉徴収票)や1099(雑所得など)などの各種税務書類の情報を入力するだけで、適切な税額を計算し、必要なフォームを作成し、IRSや州税務当局に電子申告(e-file)できるサービスです。
これらのソフトウェアは、質問形式でユーザーをガイドし、複雑な税法を理解しやすく設計されています。しかし、日本人の居住者(Resident Alien)や非居住者(Non-Resident Alien)としてのステータス、海外資産報告義務(FBAR、FATCA)、外国税額控除(Foreign Tax Credit)や国外居住免税(Foreign Earned Income Exclusion)の適用など、特有の事情を抱えるユーザーにとっては、その対応範囲と使いやすさが重要な比較ポイントとなります。
詳細解説:機能、価格、サポートの比較
1. ユーザーインターフェースと使いやすさ
TurboTax
TurboTaxは、その洗練されたユーザーインターフェースと直感的な操作性で知られています。まるで税理士と対話しているかのように、質問に答えていくだけで申告が完了する「インタビュー形式」が特徴です。特に、初めて申告する方や、英語に多少の不安がある方でも、ステップバイステップのガイドに従いやすいように設計されています。データのインポート機能も強力で、多くの金融機関からの情報を自動的に取り込むことができます。ただし、そのガイドがあまりに詳細であるため、すでに税務知識があるユーザーにとっては、一部冗長に感じられることもあります。
H&R Block
H&R Blockもまた、ユーザーフレンドリーなインターフェースを提供していますが、TurboTaxと比較すると、より直接的なフォーム入力に近い感覚があります。質問形式のガイドもありますが、特定のフォームに直接アクセスして入力するオプションも充実しており、ある程度税務知識のあるユーザーには効率的に感じられるかもしれません。また、H&R Blockは実店舗でのサポートを強みとしており、オンラインとオフラインの連携がスムーズです。視覚的なデザインはTurboTaxほど洗練されていないと感じるユーザーもいますが、機能性は非常に高いです。
2. 対応する税務状況とフォーム
TurboTax
- 一般的な所得: W-2、1099-NEC(自営業)、1099-INT/DIV/B(利子・配当・売却益)など、基本的な所得は全てカバーします。
- 控除と税額控除: 標準控除、項目別控除(住宅ローン利子、州税・地方税など)、教育費控除、扶養控除など、主要な控除に対応しています。
- 自営業者向け: Schedule C(事業損益)、Schedule SE(自営業税)など、自営業者が必要なフォームを網羅しています。
- 投資家向け: Schedule D(キャピタルゲイン・ロス)、Form 8949(売却取引の明細)などに対応し、株式、仮想通貨などの取引もサポートします。
- 外国関連: 外国税額控除(Form 1116)や国外居住免税(Form 2555)の計算をサポートしていますが、そのガイダンスは専門的な知識を前提とする部分があります。FBAR(FinCEN Form 114)やFATCA(Form 8938)の直接的な電子申告機能は提供していませんが、これらが必要な旨の警告や、別途申告するための情報を提供します。
H&R Block
- 一般的な所得: TurboTaxと同様に、W-2、1099各種、K-1(パートナーシップ・S法人など)など、幅広い所得に対応しています。
- 控除と税額控除: TurboTaxと同等の控除と税額控除に対応しており、特に不動産関連や教育費関連の控除に力を入れている印象があります。
- 自営業者向け: Schedule C、Schedule SE、ビジネス経費の追跡など、自営業者向けの機能も充実しています。
- 投資家向け: Schedule D、Form 8949に対応し、複雑な投資取引にも対応可能です。
- 外国関連: 外国税額控除(Form 1116)や国外居住免税(Form 2555)のサポートはTurboTaxと同等レベルです。FBARやFATCAについては、必要な情報を提供し、別途申告を促しますが、ソフトウェア内で直接完結させることはできません。H&R Blockは、必要に応じて国際税務に詳しい税理士への紹介オプションも提供している点が強みです。
3. 価格とエディション
両者ともに、無料版、Deluxe、Premier、Self-Employedなどのエディションを提供しており、利用できる機能やサポートレベルが異なります。無料版は、W-2所得のみのシンプルな申告に適しています。
- TurboTax: 最も人気のあるDeluxe版は、項目別控除や住宅ローン利子控除に対応します。Premier版は投資所得や賃貸収入がある方向け、Self-Employed版は自営業者向けです。一般的に、TurboTaxはH&R Blockよりも若干高価な傾向にありますが、そのユーザーエクスペリエンスの質を考慮すれば妥当と考えるユーザーも多いです。
- H&R Block: TurboTaxと同様の階層構造ですが、価格はTurboTaxよりも競争力があることが多いです。特に、Self-Employed版は自営業者にとってコストパフォーマンスが高いと評価されることがあります。実店舗でのサポートオプションも、価格に影響を与える可能性があります。
4. カスタマーサポートと監査対応
TurboTax
オンラインチャット、電話サポートを提供し、上位エディションでは税理士によるレビューや「Audit Defense」サービスも利用可能です。しかし、一般的なサポートは英語のみで、国際税務に関する専門的な質問には対応が難しい場合があります。
H&R Block
オンラインサポートに加え、全米に数千店舗を展開しており、対面でのサポートを受けられるのが最大の強みです。特に、複雑な状況や不安がある場合には、直接専門家と話せる安心感は大きいでしょう。国際税務に特化した税理士を紹介してもらえる可能性もあります。監査対応サービスも提供しています。
具体的なケーススタディ・計算例
ケーススタディ1:一般的な日本人駐在員(W-2所得、日本に少額の銀行預金)
状況: アメリカ企業で働き、W-2を受け取っている。アメリカでの生活が長く、税務上の居住者(Resident Alien)として申告。日本に少額の銀行預金(総額1万ドル未満)があるが、年間利息はごくわずか。アメリカ国外での所得はなし。
税務上の考慮点:
- W-2所得の申告
- 標準控除または項目別控除の適用
- 日本での銀行預金はFBAR申告の対象外(1万ドル未満のため)
- FATCA(Form 8938)も対象外(申告義務基準額未満のため)
ソフトウェアの比較:
このケースでは、TurboTaxとH&R BlockのどちらのDeluxe版でも十分に申告可能です。両者ともにW-2の情報をスムーズに取り込み、標準控除や簡単な項目別控除の適用をガイドします。FBARやFATCAについては、質問の途中で「外国口座を持っているか」といった確認が入りますが、金額が基準未満であれば特に複雑な手続きは不要です。使いやすさの点では、TurboTaxの直感的なインターフェースが有利に働くかもしれませんが、H&R Blockも問題なく対応できます。
ケーススタディ2:フリーランスの日本人(1099-NEC所得、日本でのフリーランス収入、日本に高額の銀行預金)
状況: アメリカでフリーランスとして働き、1099-NECを受け取っている。日本に居住するクライアントからも直接報酬を得ている(日本円で受領)。日本に合計10万ドルを超える銀行預金がある。税務上の居住者(Resident Alien)として申告。
税務上の考慮点:
- 1099-NEC所得と日本からのフリーランス収入の申告(Schedule C)
- 自営業税(Self-Employment Tax)の計算と申告(Schedule SE)
- 国外居住免税(Form 2555)または外国税額控除(Form 1116)の検討
- FBAR(FinCEN Form 114)の申告義務
- FATCA(Form 8938)の申告義務
ソフトウェアの比較:
このケースでは、両者のSelf-Employed版が必要になります。国内外のフリーランス収入の計上、事業経費の入力、自営業税の計算は両者ともに強力にサポートします。しかし、国外居住免税(FEIE)や外国税額控除(FTC)の適用、特にFBAR/FATCAの対応において、その真価が問われます。
- TurboTax Self-Employed: FEIEやFTCの計算は可能ですが、これらの適用には細かな条件があり、ソフトウェアのガイドに従うだけでは不十分な場合があります。日本からの収入をどのように計上し、円ドル換算を適切に行うか、そしてFEIEとFTCのどちらが有利かといった判断は、ユーザー自身の知識に依存する部分が大きいです。FBAR/FATCAについては、別途IRSのウェブサイトで情報を確認し、申告する必要がある旨の警告は出ますが、直接の申告機能はありません。
- H&R Block Self-Employed: 同様にFEIEやFTCの計算をサポートします。H&R Blockの強みは、必要に応じて専門家のアドバイスを求めるオプションが充実している点です。国際税務の知識を持つ税理士へのアクセスは、この複雑な状況において大きなメリットとなります。FBAR/FATCAについても、TurboTaxと同様に直接の申告機能はありませんが、より具体的なリソースや専門家への紹介が期待できるかもしれません。
このケースでは、特に国際税務に関する判断の難しさから、ソフトウェアのみでの完結は挑戦的です。最終的な判断やFBAR/FATCAの正確な申告のためには、国際税務に詳しい専門家のレビューを受けることを強く推奨します。
メリットとデメリット
TurboTaxのメリット
- 優れたユーザーインターフェース: 直感的で分かりやすく、初めてのユーザーでも迷いにくい。
- 強力なデータインポート: 多くの金融機関からのデータ取り込みがスムーズで、入力の手間を省ける。
- 包括的なガイド: 質問形式で細かく状況を確認し、適切な控除やクレジットを提案。
TurboTaxのデメリット
- 価格が比較的高め: 特に複雑な申告には上位版が必要で、H&R Blockよりも高価になる傾向。
- 国際税務の専門性: 外国税額控除や国外居住免税のガイダンスは提供されるものの、FBAR/FATCAの直接申告には対応しておらず、非常に複雑な国際税務状況には限界がある。
- 対面サポートの不足: 全てオンラインベースであり、対面での相談オプションがない。
H&R Blockのメリット
- 競争力のある価格設定: 特に上位版でTurboTaxよりもコストパフォーマンスが良い場合がある。
- 実店舗でのサポート: 全米に広がる店舗網により、対面での専門家相談が可能。複雑な状況や不安がある場合に安心感がある。
- 専門家へのアクセス: 国際税務に詳しい税理士への紹介オプションがある。
H&R Blockのデメリット
- ユーザーインターフェース: TurboTaxほど洗練されていないと感じるユーザーもいる。
- データインポート: TurboTaxほどスムーズでない場合がある。
- 国際税務の直接対応: TurboTaxと同様に、FBAR/FATCAの直接申告機能は提供されていない。
日本人ユーザーが陥りやすい間違い・注意点
- 居住者ステータスの誤解: アメリカの税務上の居住者(Resident Alien)と非居住者(Non-Resident Alien)の定義は、移民法上のステータスとは異なります。誤ったステータスで申告すると、重大な罰則に繋がる可能性があります。これらのソフトウェアは主に居住者向けであり、非居住者はForm 1040-NRを別途申告する必要があります。
- FBAR/FATCAの申告漏れ: 日本の銀行口座や証券口座など、外国金融資産の合計額が一定額を超えると、FBAR(FinCEN Form 114)およびFATCA(Form 8938)の申告義務が生じます。これらは税務申告書とは別の報告義務であり、怠ると高額な罰金が科せられます。これらのソフトウェアは直接申告できないため、別途手続きが必要です。
- 外国所得の申告漏れ: 日本からの収入(不動産収入、年金、フリーランス収入など)も、アメリカの税務上の居住者であれば原則として全世界所得として申告義務があります。
- 国外居住免税(FEIE)と外国税額控除(FTC)の誤用: どちらか一方しか選択できません。自分の状況にとってどちらが有利か、慎重に判断する必要があります。また、FEIEを適用しても自営業税(Self-Employment Tax)は免除されない点に注意が必要です。
- 記録の不備: 申告した内容を裏付ける書類(W-2、1099、領収書、銀行取引明細など)は、最低3年間は保管する必要があります。監査(Audit)の際に提示を求められることがあります。
よくある質問 (FAQ)
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非居住者(Non-Resident Alien)でもTurboTaxやH&R Blockを使えますか?
一般的に、TurboTaxやH&R Blockは「居住者(Resident Alien)」向けのソフトウェアです。非居住者が申告すべきForm 1040-NRや関連するフォームには、限定的な対応しかしていません。非居住者の場合は、Form 1040-NRに対応した専門のソフトウェア(Sprintaxなど)を利用するか、国際税務に詳しい税理士に依頼することをお勧めします。
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FBARやFATCAはこれらのソフトウェアで申告できますか?
いいえ、TurboTaxもH&R Blockも、FBAR(FinCEN Form 114)やFATCA(Form 8938)を直接電子申告する機能は提供していません。これらのソフトウェアは、これらの報告義務があることを警告し、必要な情報を伝えるにとどまります。FBARはFinCENのウェブサイトから別途電子申告が必要であり、Form 8938はIRSのForm 1040と一緒に提出されますが、その作成はソフトウェアのガイドに従うだけでは難しい場合があります。特に、FATCAは複雑なため、国際税務に詳しい税理士の助言を求めるのが賢明です。
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どのエディションを選べばいいか分かりません。簡単な見分け方はありますか?
まず、W-2所得のみで、標準控除しか使わないのであれば無料版で十分です。住宅ローン利子や州税・地方税などの項目別控除を使う場合はDeluxe版、株式や投資信託、仮想通貨などの投資所得や、賃貸収入がある場合はPremier版、自営業やフリーランスの所得がある場合はSelf-Employed版が必要となります。自分の所得源と控除の種類を把握することが、適切なエディション選択の鍵です。
まとめ
2025年版のTurboTaxとH&R Blockは、どちらもアメリカでの確定申告を効率化するための優れたツールです。日本人ユーザーにとってどちらが「使いやすい」かは、個人の税務状況、英語スキル、そしてサポートへのニーズによって異なります。
- TurboTaxは、その優れたユーザーインターフェースと直感的なガイドにより、初めての申告者や、ステップバイステップで進めたい方には非常に魅力的です。特に、W-2所得が中心で、項目別控除や簡単な投資所得がある方には、その使いやすさが際立ちます。
- H&R Blockは、競争力のある価格設定と、特に実店舗での対面サポートという点で強みを発揮します。自営業者や、複雑な状況で専門家と直接相談したいと考える方には、安心感を提供します。
しかし、どちらのソフトウェアも、居住者ステータスの判断、FBAR/FATCAの報告、複雑な外国所得の申告など、国際税務特有の複雑な問題に対しては、限定的なサポートしか提供しません。これらの問題に直面している日本人ユーザーは、ソフトウェアを補助ツールとして活用しつつ、最終的な確認や、特にFBAR/FATCAの申告に関しては、国際税務に精通したアメリカの税理士(CPA)に相談することを強くお勧めします。
ご自身の税務状況を正確に理解し、適切なツールと必要に応じた専門家のサポートを得ることで、アメリカでの確定申告をよりスムーズに、そして正確に完了させることができるでしょう。
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