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アメリカの贈与税・相続税:日本人が誤解しやすい年間非課税枠と生涯免税枠

アメリカの贈与税・相続税:日本人が誤解しやすい年間非課税枠と生涯免税枠

アメリカで会計税務サービスを提供している米国税理士として、今回は日本にお住まいの方々が特に誤解しやすいアメリカの贈与税・相続税の制度、特に「年間非課税枠」と「生涯免税枠」について詳しく解説します。

米国贈与税・相続税の基本

アメリカの贈与税(Gift Tax)と相続税(Estate Tax)は、財産を贈与する側(Donor)または残す側(Decedent)に課される連邦税です。日本の制度とは異なる点が多いため、特に国際的な資産を持つ方は注意が必要です。

年間非課税枠(Annual Gift Tax Exclusion)とは?

年間非課税枠は、贈与者が受贈者一人あたり年間一定額まで、贈与税を申告・納税することなく贈与できる制度です。この枠内での贈与は、生涯免税枠を消費せずに行うことができます。2024年現在、この年間非課税枠は18,000ドルです(毎年変動する可能性があります)。

  • ポイント1:受贈者ごと
    贈与者は、毎年、異なる受贈者それぞれに18,000ドルまで贈与できます。例えば、3人の子供がいれば、それぞれに18,000ドルずつ、合計54,000ドルを贈与しても贈与税はかかりません。
  • ポイント2:贈与者ごと
    夫婦が共同で贈与する場合、それぞれが年間非課税枠を利用できるため、受贈者一人あたり年間36,000ドルまで贈与できます。
  • ポイント3:非居住外国人(Non-Resident Alien)の場合
    非居住外国人がアメリカ人や他の非居住外国人に贈与する場合でも、年間非課税枠は適用されます。ただし、非居住外国人が贈与税の対象となるのは、アメリカ国内に所在する有形資産(米国不動産など)を贈与した場合のみです。米国株式や銀行預金などの無形資産の贈与は、非居住外国人には贈与税が課されません。
  • 配偶者への贈与の特例
    アメリカ市民である配偶者への贈与は、金額の制限なく非課税です(Unlimited Marital Deduction)。しかし、非アメリカ市民の配偶者への贈与には、年間非課税枠とは別に、より大きな年間非課税枠(2024年現在185,000ドル)が適用されます。この枠を超えると、生涯免税枠を消費するか、贈与税が発生します。

生涯免税枠(Lifetime Gift and Estate Tax Exemption)とは?

生涯免税枠は、贈与税と相続税を合わせて、生涯で非課税で贈与または相続できる総額を指します。この枠を超えた部分に贈与税または相続税が課されます。2024年現在、この生涯免税枠は一人あたり1,361万ドルと非常に高額です。

  • ポイント1:アメリカ市民・居住者に適用
    この高額な生涯免税枠は、アメリカ市民またはアメリカの居住者(Domicile)にのみ適用されます
  • ポイント2:非居住外国人(Non-Resident Alien)の場合
    日本にお住まいの非居住外国人の方にとって、この点が最大の誤解を生みやすいポイントです。非居住外国人の場合、アメリカの相続税の免税枠は、わずか6万ドルです。この6万ドルは、アメリカ国内に所在する資産(米国不動産、米国株式、米国債券など)にのみ適用されます。
  • ポイント3:将来的な変更
    現在の生涯免税枠は、2025年末で半減する予定です。今後の税制改正の動向には注意が必要です。

日本人が誤解しやすいポイント

  1. 年間非課税枠は誰でも無制限に使える?
    年間非課税枠は、原則として誰から誰への贈与にも適用されますが、非居住外国人が贈与できる対象資産は「米国に所在する有形資産」に限られます。また、日本人がアメリカ人から贈与を受ける場合、贈与税は贈与者側にかかるため、受贈者である日本人が直接アメリカに贈与税を払うことは通常ありません。
  2. 生涯免税枠は非居住者にも同じだけ適用される?
    これが最も多い誤解です。前述の通り、非居住外国人の相続税免税枠はたったの6万ドルです。例えば、アメリカに数億円の不動産や株式を保有する日本人が亡くなった場合、6万ドルを超過する部分には高額なアメリカの相続税が課される可能性があります。
  3. 日本の贈与税・相続税と混同している
    アメリカと日本では、贈与税・相続税の課税方式、免税枠、対象資産の範囲などが大きく異なります。日米間の租税条約も存在しますが、複雑なため専門家のアドバイスが不可欠です。

まとめと専門家への相談の重要性

アメリカの贈与税・相続税制度は非常に複雑であり、特に日本にお住まいの非居住外国人の方にとっては、年間非課税枠や生涯免税枠に関する誤解が、思わぬ税負担につながる可能性があります。

ご自身の資産状況や家族構成に応じた最適な税務計画を立てるためには、日米双方の税法に精通した米国税理士や弁護士といった専門家へのご相談を強くお勧めします。

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務アドバイスを提供するものではありません。具体的な税務判断については、必ず資格のある専門家にご相談ください。

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