申告ステータスの選択:夫婦合算 (Married Filing Jointly) と個別申告 (Married Filing Separately)
米国で結婚している納税者が利用できる主な申告ステータスは、「夫婦合算 (Married Filing Jointly)」と「個別申告 (Married Filing Separately)」の2つです。これらの選択は、納税額、利用可能な控除や税額控除、そして夫婦の責任に大きな影響を与えます。
夫婦合算 (Married Filing Jointly)
夫婦合算申告は、ほとんどの夫婦にとって最も有利な選択肢となることが多いです。一般的に、個別申告よりも低い税率が適用され、多くの税額控除(例:育児費用控除、教育関連控除、勤労所得税額控除など)が満額利用できます。しかし、夫婦が共同で申告を行うため、税務上の責任も共同で負うことになります(「共同かつ連帯責任」)。つまり、どちらか一方の配偶者が税金を滞納した場合、もう一方の配偶者もその責任を負うことになります。
個別申告 (Married Filing Separately)
個別申告は、特定の状況下で検討される選択肢です。例えば、一方の配偶者が多額の医療費控除を受けられる場合、または夫婦間で財政的な問題があり、共同責任を避けたい場合などです。しかし、個別申告を選択すると、利用できる税額控除や控除が大幅に制限されることが多く、一般的に夫婦合算よりも高い税負担となる傾向があります。例えば、育児費用控除や勤労所得税額控除、学費控除、学生ローン金利控除などが利用できません。また、夫婦のどちらか一方が項目別控除を選択した場合、もう一方の配偶者も項目別控除を選択しなければなりません。
配偶者が非居住外国人 (Non-Resident Alien) の場合:「6013(g)選挙」の検討
配偶者が米国市民または居住外国人ではない非居住外国人(Non-Resident Alien, NRA)である場合、通常は夫婦合算申告を選択できません。しかし、特定の状況下では、このルールには例外があります。その一つが、通称「6013(g)選挙」と呼ばれる選択肢です。
6013(g)選挙とは
6013(g)選挙とは、米国市民または居住外国人の配偶者が、非居住外国人の配偶者を米国税務上「居住外国人」として扱うことを選択できる制度です。この選挙を行うことで、夫婦は夫婦合算申告を行うことが可能になります。この選挙を有効にするためには、非居住外国人の配偶者は有効な納税者識別番号(ITIN)または社会保障番号(SSN)を持っている必要があります。
6013(g)選挙のメリット
- 低い税負担の可能性: 夫婦合算申告の税率表を利用できるため、一般的に個別申告よりも低い税率が適用される可能性があります。
- 税額控除の利用: 育児費用控除、教育関連控除、勤労所得税額控除など、夫婦合算申告でのみ利用できる、またはより多く利用できる税額控除が活用できます。
- 申告の簡素化: 一方の配偶者が米国納税者である場合、夫婦合算申告の方が全体的な申告プロセスが簡素化されることがあります。
6013(g)選挙のデメリットと注意点
- 全世界所得への課税: 6013(g)選挙を選択すると、非居住外国人の配偶者も米国税務上居住外国人として扱われるため、その全世界所得が米国の課税対象となります。日本に居住する配偶者が多額の日本国内所得を有する場合、米国での課税義務が発生する可能性があります。
- 二重課税のリスクと外国税額控除: 全世界所得が課税対象となるため、日本で課税された所得に対して米国でも課税される「二重課税」のリスクが生じます。これを軽減するために外国税額控除(Foreign Tax Credit)が利用できますが、適用には複雑なルールがあり、必ずしも全額が控除されるとは限りません。
- 情報開示の義務: 米国居住外国人として扱われるため、外国金融口座報告(FBAR)やFATCA(Form 8938)など、様々な情報開示義務が課せられる可能性があります。
- 共同かつ連帯責任: 夫婦合算申告の選択により、夫婦は税務上の共同かつ連帯責任を負います。
最終的な選択の重要性
申告ステータスの選択は、個々の状況によって最適な判断が異なります。特に配偶者が非居住外国人である場合は、6013(g)選挙のメリットとデメリットを慎重に比較検討し、両配偶者の所得、居住地、利用可能な控除などを総合的に考慮する必要があります。最も有利な選択を行うためには、複数のシナリオで税額を試算し、専門家のアドバイスを受けることが不可欠です。
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