日米年金の課税権と租税条約第17・18条:米国年金(401k/IRA)を日本居住者が受け取る際の「日本でのみ課税」ルールと二重課税回避策の全解説

導入

グローバル化が進む現代において、日米間を往来し、それぞれの国で就労経験を持つ方が増えています。それに伴い、米国と日本の両方から年金を受給するケースも決して珍しくありません。しかし、このような国際的な年金受給において最も頭を悩ませる問題の一つが、「どの国で、どのように課税されるのか」という課税権の所在と、それに伴う二重課税のリスクです。特に、米国で積み立てた401(k)やIRAといった私的年金を日本居住者が受け取る場合、あるいはその逆の場合において、日米租税条約が果たす役割は極めて重要です。

この記事では、日米租税条約の第17条(私的年金)および第18条(公的年金)に焦点を当て、米国年金(401k/IRA)を日本居住者が受け取る際の「日本でのみ課税」ルールを詳細に解説します。また、日本の年金を米国居住者が受け取る場合の取り扱い、そして二重課税を効果的に回避するための具体的な手続きについても、読者が「これさえ読めば完全に理解できる」と思えるほど網羅的かつ実践的な情報を提供します。複雑な国際税務を分かりやすく紐解き、皆様の年金受給計画をサポートするための一助となれば幸いです。

基礎知識

年金の種類と居住者の定義

日米の主な年金制度

日米間で年金課税を理解する上で、まずそれぞれの国における年金制度の種類を把握することが不可欠です。

  • 米国年金:
    • 401(k): 雇用主が提供する確定拠出型年金プラン。従業員の給与から天引きされ、運用されます。
    • IRA (Individual Retirement Arrangement): 個人が任意で加入する年金制度。Traditional IRAとRoth IRAがあり、税制上の優遇措置が異なります。
    • SEP IRA / SIMPLE IRA: 主に自営業者や中小企業向けの年金制度。
    • Social Security Benefits (社会保障年金): 米国の公的年金制度。日本の厚生年金・国民年金に相当します。
  • 日本年金:
    • 国民年金: 日本居住者全員が加入する基礎年金。
    • 厚生年金: 会社員や公務員が加入する年金で、国民年金に上乗せされます。
    • 企業年金: 企業が従業員向けに提供する年金制度。確定給付型企業年金(DB)や確定拠出年金(DC、iDeCoなど)があります。

「居住者」と「非居住者」の定義

税務上の「居住者」であるか「非居住者」であるかは、どの国の税法が適用されるかを決定する上で最も重要な要素です。日米租税条約も、この居住者ステータスに基づいて課税権を配分します。

  • 日本の居住者: 日本国内に「住所」を有する、または現在まで引き続いて1年以上「居所」を有する個人を指します。原則として、全世界所得(国内外全ての所得)について日本で課税されます。
  • 米国の居住者: 米国市民、永住権保持者(グリーンカード保持者)、または実質的滞在テスト(Substantial Presence Test)を満たす外国人を指します。原則として、全世界所得について米国で課税されます。

どちらの国においても居住者とみなされる「二重居住者」となるケースもありますが、その場合は租税条約の「レジデンシー・タイブレーカー・ルール(Tie-breaker Rule)」によって、どちらか一方の国の居住者として扱われることになります。

日米租税条約の目的と概要

日米租税条約(Convention between the Government of Japan and the Government of the United States of America for the Avoidance of Double Taxation and the Prevention of Fiscal Evasion with respect to Taxes on Income)は、両国間における所得に対する二重課税の回避と脱税の防止を目的として締結された国際的な合意です。

この条約は、両国にまたがる経済活動から生じる所得(利子、配当、年金、給与など)に対し、どちらの国が課税権を持つかを明確に定めています。年金に関して言えば、特定の種類の年金について、居住地国のみが課税権を持つのか、それとも源泉地国(年金が支払われる国)が課税権を持つのかを規定することで、納税者が同じ所得に対して両国から課税されることを防ぎます。

詳細解説:日米租税条約第17条・第18条

日米租税条約における年金課税の核心は、第17条と第18条にあります。これら2つの条文は、年金の種類によって課税権の配分を明確に区別しています。

日米租税条約第17条:私的年金(Private Pensions)

第17条は、主に私的年金(Private Pensions)の課税権について規定しています。ここでいう私的年金とは、米国の401(k)やIRA、日本の企業年金(確定給付型、確定拠出型)、個人年金保険などが該当します。公的年金(社会保障年金など)はこれに含まれません。

「居住地国のみで課税」の原則

第17条の最も重要な原則は、「一方の締約国の居住者に対し支払われる年金およびその他のこれに類する報酬であって従前の雇用に基づいて支払われるものは、当該一方の締約国においてのみ課税することができる」というものです。これは、日本居住者が米国から私的年金を受け取る場合、その年金は日本でのみ課税され、米国では課税されないことを意味します。逆に、米国居住者が日本から私的年金を受け取る場合も、米国でのみ課税され、日本では課税されません。

具体的な適用例

  • 日本居住者が米国401(k)やIRAを受け取る場合:
    米国で積み立てた401(k)やIRAから年金を受け取る日本居住者は、その年金所得について米国では課税されません。課税は日本で行われ、日本の税法に基づき「雑所得」として他の所得と合算して総合課税の対象となります。
  • 米国居住者が日本の企業年金を受け取る場合:
    日本で積み立てた企業年金を米国居住者が受け取る場合、その年金所得は米国でのみ課税され、日本では課税されません。

源泉徴収の問題とForm W-8BEN

「居住地国のみで課税」という原則があるにもかかわらず、米国から日本居住者への年金支払いでは、自動的に米国で源泉徴収が行われてしまうケースが多々あります。これは、支払い機関が受給者の税務上の居住地を正確に把握していないためです。この二重課税を回避するためには、受給者が米国歳入庁(IRS)に対して、自身が租税条約上の日本居住者であることを証明し、米国での源泉徴収を免除してもらう手続きが必要です。

この手続きに使用するのが、Form W-8BEN (Certificate of Foreign Status of Beneficial Owner for United States Tax Withholding and Reporting) です。年金支払い開始前、または受給が始まった後に、このフォームを年金支払い機関(カストディアンなど)に提出することで、米国での源泉徴収が停止され、年金が全額手取りで支払われるようになります。Form W-8BENは3年ごとに更新が必要な場合があるため、注意が必要です。

日米租税条約第18条:公的年金(Government Pensions & Social Security)

第18条は、公的年金(Government Pensions)の課税権について規定しています。これには、米国のSocial Security Benefits(社会保障年金)や、日本の厚生年金・国民年金といった公的年金が該当します。

「源泉地国のみで課税」の原則

第18条の原則は、第17条とは異なり、「一方の締約国、その地方公共団体若しくはこれらの一方の締約国の地方公共団体のいずれかの政治上の下位区分により支払われる年金であって、当該一方の締約国、地方公共団体若しくは政治上の下位区分が行う公衆への役務に関して従前の雇用に基づいて支払われるものは、当該一方の締約国においてのみ課税することができる」というものです。簡単に言えば、公的年金は「年金が支払われる国」(源泉地国)でのみ課税されるという原則です。

具体的な適用例

  • 日本居住者が米国社会保障年金を受け取る場合:
    日本に住んでいる方が米国の社会保障年金を受け取る場合、その年金所得は米国でのみ課税され、日本では課税されません。米国では、社会保障年金は所得に応じて一定割合(最大85%)が課税対象となります。
  • 米国居住者が日本の厚生年金・国民年金を受け取る場合:
    米国に住んでいる方が日本の公的年金を受け取る場合、その年金所得は日本でのみ課税され、米国では課税されません。日本での課税は、日本の税法に基づき行われます。ただし、この場合も日本での源泉徴収を停止させるためには、「租税条約に関する届出書」を日本の年金支給機関に提出する必要があります。

私的年金と公的年金で課税ルールが異なる理由

私的年金と公的年金で課税ルールが異なるのは、それぞれの年金の性格によるものです。私的年金は個人の資産形成の一環と捉えられ、その受給者の居住地で課税することが一般的です。一方、公的年金は国の社会保障制度の一部であり、その国の財政によって支えられているため、年金を支払う国(源泉地国)に課税権を留保することが国際的な慣行となっています。

二重課税回避のための手続き

租税条約の適用により、特定の所得に対する課税権が一方の国に限定される場合でも、手続きを怠ると二重課税が発生する可能性があります。これを確実に回避するためには、以下の手続きが不可欠です。

1. 源泉地国での課税免除申請(条約適用)

  • 米国からの年金(私的年金)の場合(日本居住者):
    前述の通り、年金支払い機関にForm W-8BENを提出します。これにより、米国での源泉徴収が停止され、日本でのみ課税される状況が実現します。
  • 日本からの年金(公的年金)の場合(米国居住者):
    日本の年金支給機関(日本年金機構など)に対し、「租税条約に関する届出書」(居住者証明書を添付)を提出します。これにより、日本での源泉徴収が停止され、米国でのみ課税される状況が実現します。

2. 外国税額控除 (Foreign Tax Credit)

稀に、租税条約が適用されないケースや、条約が適用されても一部の所得について二重課税が完全に解消されないケースがあります。例えば、米国市民が日本に居住し、日本の年金を受け取る場合、米国は自国民の全世界所得に課税する権利を主張することがあります(市民権ベース課税)。このような場合、一方の国で支払った税金をもう一方の国の税額から差し引く「外国税額控除」の仕組みを利用して二重課税を回避します。

  • 米国での手続き: Form 1116 (Foreign Tax Credit) をIRSに提出し、日本で支払った税額を米国の確定申告で控除します。
  • 日本での手続き: 確定申告書に外国税額控除に関する記載を行い、米国で支払った税額を日本の所得税額から控除します。

ただし、年金所得が租税条約によって一方の国でのみ課税されることになっている場合、原則として外国税額控除は不要です。外国税額控除は、両国に課税権がある場合に適用される二重課税回避措置だからです。

社会保障協定との関係

日米社会保障協定は、年金受給資格期間の通算を目的としたものであり、年金の課税権とは直接関係ありません。この協定は、日米いずれかの国で年金受給資格期間を満たしていない場合でも、両国の年金加入期間を合算することで年金受給資格を得られるようにするものです。課税の側面は、あくまで日米租税条約によって規定されます。

具体的なケーススタディ・計算例

理論だけでなく、具体的なケースを通して理解を深めましょう。

ケース1:日本居住者が米国401(k)から年金を受け取る場合

**設定:** ジョンさんは長年米国で働き401(k)を積み立てた後、日本に帰国し、日本の居住者となりました。65歳になり、401(k)から年間5万ドル(1ドル=150円として750万円)の年金を受け取ります。

  • 米国での課税:
    ジョンさんは日本居住者であるため、日米租税条約第17条(私的年金)の規定により、米国ではこの401(k)からの年金に対して課税されません。ジョンさんは年金支払い機関に対し、Form W-8BENを提出し、米国での源泉徴収を停止する手続きを行います。この手続きが完了すれば、米国での税負担はゼロとなります。
  • 日本での課税:
    ジョンさんが受け取る5万ドル(750万円)の年金は、日本の所得税法上「雑所得」として課税されます。雑所得の金額は、年金収入から公的年金等控除額を差し引いて計算されます。

計算例(日本の雑所得):

  • 年金収入: 750万円
  • 仮に公的年金等控除額が110万円(65歳以上、年金収入330万円超660万円未満の場合の一部)とすると、
    雑所得 = 750万円 – 110万円 = 640万円

この640万円が、給与所得など他の所得と合算され、所得税・住民税の課税対象となります。

ケース2:米国居住者が日本の厚生年金から年金を受け取る場合

**設定:** メアリーさんは日本で数年間勤務し厚生年金を積み立てた後、米国に永住帰国し、米国の居住者となりました。65歳になり、日本の厚生年金から年間300万円(1ドル=150円として2万ドル)の年金を受け取ります。

  • 日本での課税:
    メアリーさんは米国居住者であるため、日米租税条約第18条(公的年金)の規定により、この厚生年金からの年金は日本でのみ課税されます。メアリーさんは日本の年金支給機関に対し、「租税条約に関する届出書」を提出することで、日本での源泉徴収を停止してもらい、日本での確定申告によって税金を納めます。
  • 米国での課税:
    日米租税条約第18条の規定により、メアリーさんが受け取る日本の厚生年金は米国では課税されません。

計算例(日本の公的年金等控除):

  • 年金収入: 300万円
  • 公的年金等控除額(65歳以上、年金収入110万円超330万円未満の場合): 300万円 × 75% – 27.5万円 = 197.5万円
  • 雑所得 = 300万円 – 197.5万円 = 102.5万円

この102.5万円が、日本の所得税・住民税の課税対象となります。

ケース3:日本居住者が米国社会保障年金を受け取る場合

**設定:** ケンさんは米国での就労経験があり、日本居住者として米国の社会保障年金から年間2万ドル(300万円)を受け取ります。

  • 米国での課税:
    ケンさんは日本居住者ですが、日米租税条約第18条(公的年金)の規定により、米国の社会保障年金は米国でのみ課税されます。米国では、個人の年間所得に応じて社会保障年金の一部(最大85%)が課税対象となります。
  • 日本での課税:
    日米租税条約第18条の規定により、ケンさんが受け取る米国の社会保障年金は日本では課税されません。

このケースでは、ケンさんは日本の確定申告で社会保障年金について申告する必要はありません。米国で適切に税金が計算され、源泉徴収されます。

メリットとデメリット

メリット

  • 二重課税の回避:
    最も重要なメリットは、日米租税条約によって、同じ年金所得に対して両国から課税されるという不合理な状況を回避できる点です。これにより、納税者の経済的負担が軽減されます。
  • 課税の明確化:
    どの種類の年金が、どちらの国で課税されるのかが明確に定められているため、納税者は将来の税負担を予測しやすくなります。
  • 手続きの簡素化(居住地国のみ課税の場合):
    私的年金のように居住地国のみで課税される場合、源泉地国での税務申告が不要となるため、手続きが簡素化されます(ただし、源泉徴収停止の手続きは必要)。

デメリット

  • 複雑な条約解釈と手続き:
    租税条約の規定は専門的であり、年金の種類、居住地、国籍などによって適用される条文が異なります。正確な理解と適切な手続き(W-8BENの提出など)が求められ、これを誤ると二重課税のリスクが生じます。
  • 国境をまたぐ税務申告の負担:
    たとえ課税権が一方の国に限定されても、年金支払い機関への届出や、居住地国での確定申告など、国境をまたぐ税務手続きは依然として負担となることがあります。
  • 源泉徴収停止手続きの遅延による一時的な二重課税リスク:
    W-8BEN等の提出が遅れたり、適切に行われなかったりすると、源泉地国で不必要な源泉徴収が行われてしまい、還付手続きが必要となる場合があります。この還付手続きは時間と手間がかかります。

よくある間違い・注意点

  • Form W-8BENの提出忘れや遅延:
    米国から私的年金を受け取る日本居住者が最も陥りやすい間違いです。提出しないと、米国で30%の源泉徴収が行われ、還付手続きに多大な労力がかかります。必ず年金受給開始前に提出しましょう。
  • 「租税条約に関する届出書」の提出忘れ:
    日本から公的年金を受け取る米国居住者が、日本での源泉徴収を停止するために必要な手続きです。これを怠ると、日本で源泉徴収された後に還付手続きが必要になります。
  • 公的年金と私的年金の区別を誤る:
    第17条と第18条で課税ルールが大きく異なるため、自分が受け取る年金がどちらに該当するのかを正確に判断することが重要です。特に、日本の企業年金や米国の社会保障年金は、その性質を誤解しやすい場合があります。
  • 居住地の定義の誤解:
    税務上の居住地は、戸籍上の住所や国籍とは必ずしも一致しません。特に二重居住の疑いがある場合は、租税条約のタイブレーカー・ルールに基づいて慎重に判断する必要があります。
  • Roth IRAの扱い:
    Roth IRAからの適格分配金は、米国では非課税ですが、日本では課税対象となる可能性があります。これは、日米租税条約がRoth IRAの非課税規定を完全にカバーしていないためです。日本の税法では、年金として受け取る場合は雑所得、一時金として受け取る場合は一時所得となる可能性があります。
  • 州税の考慮(米国の場合):
    米国で課税される場合、連邦税だけでなく、州税も考慮する必要があります。州によっては年金所得に課税しない場合もありますが、課税される州もあります。

よくある質問 (FAQ)

Q1: Roth IRAの引き出しも日本で課税されますか?

A1: はい、課税される可能性があります。Roth IRAからの適格分配金は、米国連邦税法上は非課税とされています。しかし、日米租税条約第17条は、特定の年金が「居住地国においてのみ課税される」と定めていますが、米国税法上の非課税所得まで日本の課税権を排除するものではないと解釈されることがあります。そのため、日本居住者がRoth IRAから年金として受け取る場合は雑所得、一時金として受け取る場合は一時所得として、日本の税法に基づき課税対象となる可能性が高いです。米国での非課税を期待していても、日本での課税は発生しうるため、注意が必要です。

Q2: Form W-8BENを提出しないとどうなりますか?

A2: Form W-8BENを提出しない場合、米国年金支払い機関は受給者を米国非居住者と認識しつつも、租税条約の適用を受けない通常のケースとして、米国税法に基づき一律30%の源泉徴収を行うのが一般的です。本来、日米租税条約第17条により米国では課税されないはずの所得にもかかわらず、課税されてしまうことになります。この場合、課税された税金を取り戻すためには、翌年以降にIRSにForm 1040-NR (U.S. Nonresident Alien Income Tax Return) を提出し、還付請求を行う必要があります。この手続きは非常に手間と時間がかかりますので、必ず事前にW-8BENを提出するようにしてください。

Q3: 日本の確定拠出年金(iDeCo)を米国居住者が受け取る場合、どうなりますか?

A3: 日本の確定拠出年金(iDeCo)は私的年金に該当します。したがって、米国居住者がiDeCoから年金を受け取る場合、日米租税条約第17条の規定により、その年金所得は米国でのみ課税され、日本では課税されません。米国居住者は、日本の年金支払い機関に対し「租税条約に関する届出書」を提出することで、日本での源泉徴収を停止し、米国で確定申告を行う必要があります。

Q4: 租税条約は自動的に適用されますか?

A4: いいえ、租税条約は自動的には適用されません。条約の恩典を受けるためには、納税者自身が適切な手続きを行う必要があります。具体的には、源泉地国での源泉徴収を免除してもらうための申請書(米国であればForm W-8BEN、日本であれば「租税条約に関する届出書」)を、年金支払い機関や税務当局に提出することが不可欠です。これらの手続きを怠ると、本来課税されないはずの国で源泉徴収が行われ、二重課税が発生するリスクがあります。

Q5: 年金以外に利子や配当がある場合も同じルールですか?

A5: いいえ、年金以外の利子や配当には、年金とは異なる課税ルールが適用されます。日米租税条約には、利子(第11条)や配当(第10条)についても個別の規定があります。一般的に、利子や配当は源泉地国でも一定の制限税率(例: 10%)で課税されることが許容され、居住地国でも課税されますが、二重課税は居住地国での外国税額控除によって回避されます。したがって、年金と他の所得を混同せず、それぞれの所得源泉に対して適切な租税条約の条文を適用し、必要な手続きを行う必要があります。

まとめ

日米間の年金課税は、一見複雑に見えますが、日米租税条約の第17条と第18条を正しく理解することで、その原則は明確になります。

  • 私的年金(401k, IRA, 企業年金など): 居住地国でのみ課税。日本居住者が米国から受け取る場合は日本でのみ課税、米国居住者が日本から受け取る場合は米国でのみ課税。源泉地国での源泉徴収を停止するための手続き(Form W-8BENや租税条約に関する届出書)が不可欠です。
  • 公的年金(Social Security Benefits, 厚生年金, 国民年金など): 源泉地国でのみ課税。日本居住者が米国社会保障年金を受け取る場合は米国でのみ課税、米国居住者が日本の公的年金を受け取る場合は日本でのみ課税。こちらも源泉徴収停止のための手続きが必要となる場合があります。

この二つの明確なルールを軸に、ご自身の年金の種類と居住者ステータスを確認することが、二重課税を回避し、適切な税務処理を行うための第一歩です。特に、Form W-8BENの提出や日本の「租税条約に関する届出書」の提出は、不必要な源泉徴収を防ぐ上で極めて重要です。

国際税務は常に変化し、個々の状況によって適用されるルールが異なります。この記事で提供した情報は網羅的ではありますが、最終的な判断や具体的な手続きに関しては、必ず日米両国の税法に精通した専門家(税理士や公認会計士)に相談されることを強くお勧めします。計画的な年金受給と適切な税務申告を通じて、安心して豊かな老後を迎えられるよう、準備を進めていきましょう。

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