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GASで実現!スプレッドシート経費精算データをGmailで自動承認フロー化

GASで実現!スプレッドシート経費精算データをGmailで自動承認フロー化

導入

現代のビジネス環境では、業務効率化と迅速な意思決定が不可欠です。特に経費精算プロセスは、多くの企業で時間と労力がかかる部門の一つであり、その遅延はプロジェクトの進行やキャッシュフローに影響を与える可能性があります。従来、経費精算は紙ベースの申請書やメールでのやり取りが中心でしたが、これらは紛失のリスク、追跡の困難さ、承認までのリードタイムの長さといった課題を抱えています。近年、クラウドベースのツールが普及する中で、Google Workspace(旧G Suite)の強力な連携機能、特にGoogle スプレッドシートとGmail、そしてそれを支えるGoogle Apps Script(GAS)を活用することで、この経費精算プロセスを劇的に効率化し、承認フローを自動化することが可能になりました。本記事では、GASを用いてスプレッドシート上の経費精算データをGmail経由で自動的に承認者へ回覧し、承認・却下をスムーズに行うための実践的な手法を、基礎知識から応用、そして具体的な注意点まで網羅的に解説します。この知識を習得することで、経費精算業務のペーパーレス化、迅速化、そしてミスの削減を実現し、より戦略的な業務にリソースを集中させることができるようになります。

基礎知識

Google Apps Script (GAS) とは

Google Apps Script(GAS)は、Google Workspaceの各アプリケーション(Gmail, スプレッドシート, ドキュメント, カレンダーなど)を連携させ、カスタマイズされた自動化や機能拡張を行うためのJavaScriptベースのスクリプト言語です。GASの最大の特徴は、特別なソフトウェアのインストールが不要で、ブラウザ上でコードを記述・実行できる点にあります。これにより、プログラミングの専門知識が浅いユーザーでも、比較的容易に業務を自動化するスクリプトを作成できます。例えば、スプレッドシートの特定のセルが更新されたらGmailを送信する、カレンダーの予定に基づいてドキュメントを作成するといった、日常的な業務を効率化する様々なシナリオが実現可能です。GASはGoogleのサーバー上で実行されるため、PCの電源を切っていてもスクリプトは稼働し続けます。これは、定時実行やイベント駆動型の自動化において非常に強力な利点となります。

スプレッドシートでの経費精算データ管理

スプレッドシートは、その柔軟性と汎用性から、多くの企業で経費精算データの管理に利用されています。基本的な構成としては、各行が一つの経費申請を表し、列には申請日、申請者名、経費科目、金額、摘要、領収書添付の有無、ステータス(申請中、承認済、却下など)といった情報が記録されます。GASを活用することで、このスプレッドシートを単なるデータ記録表から、動的なワークフローの一部として機能させることが可能になります。例えば、ステータス列が「申請中」になったらGASが自動的に起動し、承認者へ通知メールを送信する、といった連携が考えられます。また、数式や条件付き書式を活用することで、入力規則の強化や、金額の集計、承認ステータスの可視化なども容易に行えます。

Gmailの活用とトリガー機能

Gmailは、Google Workspaceのコアサービスであり、GASとの連携が非常に強力です。GASを使用すると、Gmailアカウントからメールを送信するだけでなく、受信したメールを読み取ったり、特定の条件に基づいてメールを処理したりすることも可能です。経費精算の承認フローにおいては、主に「承認者への通知メール送信」と「承認・却下ボタンの設置(またはリンクの提供)」といった形で活用されます。GASには「トリガー」という機能があり、特定のイベント(例: スプレッドシートの編集、特定時刻の到達、フォームの送信など)が発生した際に、自動的にスクリプトを実行させることができます。経費精算の自動化では、スプレッドシートのステータスが「申請中」に更新されたことをトリガーとして、承認者へ通知メールを送信する、といった設定が一般的です。

詳細解説

ワークフローの設計と思考プロセス

GASを用いた経費精算の自動化を成功させるためには、まず明確なワークフロー設計が不可欠です。どのようなステップで承認が進むのか、誰が承認者なのか、承認・却下された場合の次のアクションは何か、といった点を具体的に定義します。例えば、以下のようなフローが考えられます。

  1. 申請者:スプレッドシートに経費情報を入力し、ステータスを「申請中」に変更する。
  2. GASトリガー:スプレッドシートの変更を検知し、スクリプトを実行する。
  3. GASスクリプト:申請者、申請内容、承認依頼URLなどを取得し、承認者(特定のアドレスまたはスプレッドシート上の担当者列)へメールを送信する。メールには、申請内容の概要と、承認・却下を促すためのリンク(またはボタン)を含める。
  4. 承認者:メール内のリンクをクリックし、スプレッドシート上の該当申請のステータスを「承認済」または「却下」に変更する。
  5. GASトリガー:スプレッドシートのステータス変更を検知し、スクリプトを実行する。
  6. GASスクリプト:申請者へ承認結果(承認済または却下)を通知するメールを送信する。却下の場合は、却下理由の入力を促すことも検討する。

この設計段階で重要なのは、「誰が」「いつ」「何をするか」を明確にすることです。また、承認者が複数いる場合(例:一次承認、二次承認)は、その順序や条件分岐も考慮する必要があります。承認権限の管理方法(例:固定の承認者リスト、申請内容に応じた動的な承認者割り当て)も、この段階で決定しておくと良いでしょう。

スプレッドシートの準備とデータ構造

経費精算データを格納するスプレッドシートは、GASからのアクセスを考慮した構造にする必要があります。最低限、以下の列を用意することを推奨します。

  • 申請ID:各申請を一意に識別するためのID(連番など)。GASで処理する際に、特定の申請を特定するために使用します。
  • 申請日:経費が発生した日または申請日。
  • 申請者メールアドレス:申請者のメールアドレス。結果通知などに使用します。
  • 申請者名:申請者の氏名。
  • 経費科目:交通費、交際費、消耗品費など。
  • 金額:経費の合計金額。
  • 摘要/内容:経費の詳細な説明。
  • 添付ファイルURL:領収書などの添付ファイルへのリンク(Google Driveなどに保存)。
  • 承認者メールアドレス:この申請の一次承認者のメールアドレス。
  • ステータス:申請の状態(例:「申請待ち」、「承認済」、「却下」、「差戻し」)。GASはこの列の変更をトリガーにします。
  • 承認日:承認または却下された日付。
  • 承認者コメント:承認者からのコメント(却下理由など)。

スプレッドシートの各シートには、申請データだけでなく、「承認者リスト」や「経費科目リスト」といった補助的なシートを作成しておくと、GASからの参照が容易になり、管理もしやすくなります。例えば、承認者リストシートに「部署名」と「メールアドレス」を紐づけておけば、申請者の部署に応じて自動的に承認者を割り当てることが可能になります。

GASスクリプトの作成と解説

ここでは、スプレッドシートのステータスが「申請中」になったら承認者へメールを送信し、承認者がメール内のリンクをクリックしてステータスを変更したら申請者へ通知する、という基本的なGASスクリプトの例を解説します。

1. スプレッドシートの変更を検知するトリガー設定

スプレッドシートを開き、「拡張機能」>「Apps Script」を選択してスクリプトエディタを開きます。左側の時計アイコン(トリガー)をクリックし、「トリガーを追加」ボタンを押します。実行する関数を選択し、「イベントのソース」で「スプレッドシートから」を選び、「イベントの種類」で「シートの編集時」を選択します。これにより、スプレッドシートが編集されるたびにスクリプトが実行されるようになります。ただし、無駄な実行を避けるため、特定のシートや特定の列の変更時のみ実行するように条件分岐を追加することが望ましいです。

2. 申請時に承認者へメールを送信する関数

以下は、スプレッドシートの「ステータス」列が「申請中」に更新された際に、申請内容をメールで通知するGASのサンプルコードです。

function sendApprovalRequest(e) {
  // イベントオブジェクト 'e' を使用して、変更されたシートやセル情報を取得
  var sheet = e.source.getActiveSheet();
  var range = e.range;
  var col = range.getLastColumn(); // 変更されたセルの最終列
  var row = range.getRow(); // 変更されたセルの行

  // ステータス列(例:10列目)が変更されたか、かつ値が「申請中」かを確認
  if (col === 10 && range.getValue() === "申請中") {
    var dataSheet = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet().getSheetByName("申請データ"); // 申請データシート名
    var approvalSheet = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet().getSheetByName("承認者リスト"); // 承認者リストシート名

    // 申請データを取得 (ヘッダー行を除く)
    var dataRange = dataSheet.getRange(row, 1, 1, dataSheet.getLastColumn());
    var rowValues = dataRange.getValues()[0];

    var applicantName = rowValues[3]; // 申請者名 (例: 4列目)
    var amount = rowValues[5]; // 金額 (例: 6列目)
    var description = rowValues[6]; // 摘要 (例: 7列目)
    var applicantEmail = rowValues[2]; // 申請者メールアドレス (例: 3列目)

    // 承認者メールアドレスを取得 (例: 承認者リストシートから申請者の部署で検索)
    // ここでは簡単のため、申請データシートの承認者メールアドレス列から直接取得する例
    var approverEmail = rowValues[8]; // 承認者メールアドレス (例: 9列目)

    // メール件名
    var subject = "【要承認】経費精算申請のお知らせ - " + applicantName;

    // メール本文の作成 (HTML形式)
    var body = "

" + applicantName + "様より、経費精算の申請がありました。

" + "

申請内容:

" + "
    " + "
  • 金額: " + amount + "円
  • " + "
  • 摘要: " + description + "
  • " + "
" + "

申請内容の詳細は、以下のスプレッドシートをご確認ください。

" + "

申請詳細はこちら

" + "

承認または却下するには、以下のリンクをクリックしてください:

" + "

承認 | 却下

" + "

(※このメールに返信しても処理されません)

"; // Gmailを送信 GmailApp.sendEmail(approverEmail, subject, "", {htmlBody: body}); } }

コード解説:

  • `sendApprovalRequest(e)`: トリガーによって実行される関数です。`e`オブジェクトには、イベントに関する情報が含まれます。
  • `e.source.getActiveSheet()`: 変更が発生したシートを取得します。
  • `e.range`: 変更が発生したセル範囲を取得します。
  • `col === 10 && range.getValue() === “申請中”`: 10列目(ステータス列を想定)が変更され、その値が「申請中」である場合にのみ処理を実行します。列番号はご自身のスプレッドシートに合わせて調整してください。
  • `dataSheet.getRange(row, 1, 1, dataSheet.getLastColumn()).getValues()[0]`: 変更があった行の全データを配列として取得します。
  • `rowValues[…]`: 配列から各項目(申請者名、金額など)を取り出します。インデックスは0から始まるため、実際の列番号より1小さい値になります。
  • `ScriptApp.getService().getUrl()`: GASでデプロイされたWeb AppsのURLを取得します。これにより、メール内のリンクからGASを呼び出すことができます。
  • `GmailApp.sendEmail()`: Gmailを送信します。`htmlBody`オプションでHTML形式のメール本文を指定できます。

3. 承認・却下リンクの処理

メール内の承認・却下リンクをクリックされた際に、GASを起動してスプレッドシートのステータスを更新し、申請者へ通知する処理も必要です。これは、GASをWeb Appsとしてデプロイすることで実現できます。スクリプトエディタの左側にある「デプロイ」>「新しいデプロイ」から、実行タイプを「Web Apps」としてデプロイします。

Web AppsとしてデプロイされたGASは、HTTPリクエストを受け付けることができます。以下のコードは、Web Appsでリクエストを受け取り、承認・却下処理を行う例です。

function doGet(e) {
  var action = e.parameter.action;
  var row = parseInt(e.parameter.row);
  var sheetId = e.parameter.sheetId;
  var spreadsheetUrl = "YOUR_SPREADSHEET_URL"; // ここにスプレッドシートのURLを入力

  var ss = SpreadsheetApp.openByUrl(spreadsheetUrl);
  var sheet = ss.getSheets().filter(function(s) { return s.getSheetId() == sheetId; })[0];
  var dataSheet = ss.getSheetByName("申請データ");

  var applicantEmail = dataSheet.getRange(row, 3).getValue(); // 申請者メールアドレス
  var applicantName = dataSheet.getRange(row, 4).getValue(); // 申請者名
  var approverName = ""; // 承認者名 (特定できれば)

  if (action === "approve") {
    sheet.getRange(row, 10).setValue("承認済"); // ステータスを「承認済」に更新
    sheet.getRange(row, 11).setValue(new Date()); // 承認日
    // 承認者名を取得 (例: 9列目)
    approverName = sheet.getRange(row, 9).getValue(); 
    GmailApp.sendEmail(applicantEmail, "【完了】経費精算申請が承認されました", "" + applicantName + "様の申請は承認されました。");
    return ContentService.createTextOutput("申請が承認されました。画面を閉じてください。");
  } else if (action === "reject") {
    sheet.getRange(row, 10).setValue("却下"); // ステータスを「却下」に更新
    sheet.getRange(row, 11).setValue(new Date()); // 却下日
    // 承認者名を取得 (例: 9列目)
    approverName = sheet.getRange(row, 9).getValue();
    // 却下理由の入力を促す (オプション)
    var rejectReason = Browser.inputBox("却下理由", "却下理由を入力してください:", Browser.Buttons.OK_CANCEL);
    if (rejectReason !== "cancel" && rejectReason !== "") {
       sheet.getRange(row, 12).setValue(rejectReason); // 承認者コメント列に記録
       GmailApp.sendEmail(applicantEmail, "【却下】経費精算申請", "" + applicantName + "様の申請は却下されました。理由: " + rejectReason);
       return ContentService.createTextOutput("申請が却下されました。画面を閉じてください。");
    } else {
       return ContentService.createTextOutput("却下処理がキャンセルされました。");
    }
  } else {
    return ContentService.createTextOutput("無効なリクエストです。");
  }
}

コード解説:

  • `doGet(e)`: Web AppsへのGETリクエストを処理する関数です。
  • `e.parameter.action`, `e.parameter.row`, `e.parameter.sheetId`: URLパラメータからアクション(approve/reject)、行番号、シートIDを取得します。
  • `SpreadsheetApp.openByUrl(spreadsheetUrl)`: 指定したURLのスプレッドシートを開きます。`YOUR_SPREADSHEET_URL`は必ずご自身のスプレッドシートのURLに置き換えてください。
  • `sheet.getRange(row, 10).setValue(…)`: 指定した行の10列目(ステータス列)に「承認済」または「却下」を書き込みます。
  • `GmailApp.sendEmail(applicantEmail, …)`: 申請者へ結果を通知するメールを送信します。
  • `Browser.inputBox()`: 却下理由をユーザーに入力させるためのダイアログを表示します。これはブラウザ環境でのみ機能するため、Web Appsの実行権限によっては動作しない場合があります。より堅牢な実装では、却下理由入力用の別シートや、別フォームを用意することを検討します。
  • `ContentService.createTextOutput(…)`: ブラウザに表示するメッセージを返します。

注意点: 上記のコードは基本的な例です。実際には、エラーハンドリング(存在しない行番号が指定された場合など)、承認者の確認(本当にその承認者が操作したか)、複数承認者への対応、却下理由の入力方法など、より詳細な実装が必要になります。また、Web Appsはデプロイ時に実行権限(誰が実行できるか)を設定できますので、社内限定でアクセスできるように設定することが重要です。

承認・却下ボタンの代替手段

メールに直接リンクを貼る方法以外にも、承認・却下を促す方法があります。

  • Gmailのカスタムボタン(Gmail API): より洗練されたUIを提供したい場合、Gmail APIを利用してメール内にカスタムボタンを埋め込むことも可能ですが、GAS単体での実装は複雑になります。
  • Google Chat/Slack連携: 承認依頼をGmailではなく、Google ChatやSlackなどのチャットツールに送信し、そこから承認操作を行うようにする。GASはこれらのチャットツールのAPIとも連携可能です。
  • 専用フォームの利用:GASで生成したWeb AppsのURLを、承認・却下用のシンプルなフォーム(Google Formsなど)にリンクさせ、フォーム送信によってステータスを更新する。

どの方法を選択するかは、利用者のITリテラシーや、求めるUI/UX、開発工数によって判断します。

エラーハンドリングとロギング

自動化スクリプトにおいては、予期せぬエラーが発生した場合の対応が重要です。GASでは、`try…catch`ブロックを使用してエラーを捕捉し、ログを出力する仕組みを実装できます。

function sendApprovalRequestWithLogging(e) {
  try {
    // ここに元のスクリプトの処理を記述
    var sheet = e.source.getActiveSheet();
    var range = e.range;
    // ... (省略) ...
    GmailApp.sendEmail(approverEmail, subject, "", {htmlBody: body});
    Logger.log("申請メール送信完了:" + applicantName);
  } catch (error) {
    Logger.log("エラー発生: " + error.message + "\n" + error.stack);
    // エラー発生時に申請者や管理者に通知する処理を追加することも可能
    // GmailApp.sendEmail("admin@example.com", "GASエラー通知", "エラー: " + error.message);
  }
}

`Logger.log()`は、スクリプトエディタの「実行ログ」で確認できます。これにより、問題発生時の原因究明が容易になります。さらに、重要な処理の成功・失敗を記録するために、スプレッドシート上に「ログ」シートを作成し、そこに記録していく方法も有効です。

具体的なケーススタディ・計算例

ケーススタディ:月次経費精算の自動承認フロー

シナリオ: ある部署では、毎月月末に経費精算が行われ、部署のマネージャーが承認を行っています。申請者はスプレッドシートに経費を入力し、ステータスを「申請中」に変更します。GASは、月末に自動実行されるように設定され、未承認の申請があればマネージャーにメールで通知します。マネージャーはメール内のリンクをクリックして承認し、承認されると申請者にメールで通知されます。

実装のポイント:

  • 定時実行トリガー: スプレッドシートの編集時トリガーではなく、毎日(例:午前9時)実行されるようにGASの定時実行トリガーを設定します。
  • 全件チェック: スクリプトは、スプレッドシートの全行をチェックし、ステータスが「申請中」の申請をすべてリストアップします。
  • メール集約: マネージャーには、その日に申請されたすべての経費精算をまとめた1通のメールを送信するようにします。
  • 承認リンク: 各申請ごとに個別の承認リンクを生成し、メールに含めます。
  • 申請者への通知: 承認後、申請者には「承認されました」というメールが送信されます。

計算例(GAS内での処理):

例えば、申請された経費の合計金額が一定額(例:5万円)を超える場合に、追加の承認者(例:経理部長)が必要となるようなロジックをGASで実装できます。

// ... (申請データ取得後) ...
var amount = rowValues[5]; // 金額
var approverEmail = rowValues[8]; // 一次承認者メールアドレス
var secondaryApproverEmail = ""; // 二次承認者メールアドレス

if (amount > 50000) {
  // 二次承認者を取得 (例: 承認者リストシートから)
  secondaryApproverEmail = approvalSheet.getRange("B2").getValue(); // 例: 固定の経理部長メールアドレス
  var subject = "【要確認】高額経費精算申請のお知らせ - " + applicantName;
  var body = "..."; // 二次承認者への依頼内容
  GmailApp.sendEmail(secondaryApproverEmail, subject, "", {htmlBody: body});
  // ステータスを「二次承認待ち」などに変更する
  sheet.getRange(row, 10).setValue("二次承認待ち");
} else {
  // 通常の承認プロセスへ
  GmailApp.sendEmail(approverEmail, subject, "", {htmlBody: body});
}

このように、GASを使用することで、金額や経費科目などのデータに基づいて、動的に承認フローを分岐させることが可能です。これは、単なる自動化を超えた、ワークフロー管理システムの構築と言えます。

メリットとデメリット

メリット

  • 業務効率の大幅な向上: 手作業による申請書作成、メールでのやり取り、手動でのステータス更新といった手間が削減され、経費精算にかかる時間を大幅に短縮できます。
  • 承認プロセスの迅速化: 承認者への通知が即座に行われ、場所を選ばずに承認・却下が可能になるため、意思決定のスピードが向上します。
  • ミスの削減と正確性の向上: 入力規則の設定や自動計算により、人的ミスが減少し、データの正確性が保たれます。
  • ペーパーレス化の推進: 紙の書類が不要になり、環境負荷の低減と保管スペースの節約につながります。
  • コスト削減: 紙代、印刷代、郵送代などのコスト削減に加え、担当者の作業時間削減による人件費の最適化も期待できます。
  • 可視性と追跡性の向上: スプレッドシート上で申請状況が一元管理され、リアルタイムで進捗を確認できます。
  • カスタマイズ性の高さ: GASを使用するため、自社の業務フローに合わせて細かくカスタマイズが可能です。

デメリット

  • 初期開発コストと学習コスト: GASのスクリプト作成には、ある程度のプログラミング知識と、自社フローに合わせた設計・開発が必要です。専門知識がない場合は、外部に委託するコストが発生する可能性があります。
  • メンテナンスの手間: Google Workspaceの仕様変更や、業務フローの変更に伴い、スクリプトの修正やメンテナンスが必要になる場合があります。
  • セキュリティリスク: Web Appsとしてデプロイする場合、アクセス権限の設定を誤ると、意図しないユーザーに情報が公開されるリスクがあります。また、スクリプト内に機密情報をハードコーディングしないよう注意が必要です。
  • 複雑なワークフローへの対応限界: 非常に複雑で動的な承認ルート(例:承認者の承認履歴によって次の承認者が変わるなど)や、外部システムとの高度な連携が必要な場合は、GASだけでは対応が難しい場合があります。
  • ユーザーのITリテラシー: 承認者や申請者が、スプレッドシートの操作やメールのリンクをクリックするといった基本的な操作に慣れていない場合、導入の障壁となる可能性があります。

よくある間違い・注意点

  • トリガー設定の甘さ: 「すべての編集時」トリガーを設定し、意図しない変更でもスクリプトが実行されてしまう。または、逆に実行条件が厳しすぎて必要な時に実行されない。特定の値(例:「申請中」)になった時のみ実行する、といった条件分岐をしっかり実装することが重要です。
  • スプレッドシートの列構成の固定化: スクリプト内で列番号を直接指定していると、後で列を挿入・削除した際にスクリプトが動作しなくなります。可能であれば、ヘッダー行を読み取って列名をキーにデータを取得するなどの工夫をすると、メンテナンス性が向上します。
  • エラーハンドリングの不足: エラーが発生してもログが出力されず、原因究明に時間がかかる。`try…catch`ブロックと`Logger.log()`を適切に使用し、問題発生時に迅速に対応できるようにしましょう。
  • Web Appsのアクセス権限設定ミス: デプロイ時に「全員」に公開してしまうなど、セキュリティ設定を誤ると情報漏洩につながる可能性があります。「自分」「組織内の特定ユーザー」などに限定してデプロイするようにしましょう。
  • Gmail送信制限の考慮不足: GASのGmail送信には、1日あたりの送信上限があります(無料アカウントでは100通、Google Workspaceアカウントでは1500通など)。大量のメールを送信する可能性がある場合は、送信タイミングを調整したり、送信先を絞り込んだりする工夫が必要です。
  • 承認・却下リンクの有効期限: Web AppsのURLは、デプロイ設定によっては無効になることがあります。定期的なデプロイの更新が必要になる場合があることを理解しておきましょう。
  • 承認理由の入力方法: 却下理由の入力に`Browser.inputBox()`を使用すると、ブラウザ環境に依存し、またユーザー体験も良くありません。却下理由をスプレッドシートの別セルに入力させる、あるいはGoogle Formsなどのフォームを利用する方が堅牢です。

よくある質問 (FAQ)

Q1: GASのプログラミング経験が全くありませんが、作成可能でしょうか?

A1: ゼロから完全に自力で作成するのは難しいかもしれませんが、本記事で紹介したようなサンプルコードを参考に、基本的な部分から学習していくことは十分に可能です。Google Apps Scriptの公式ドキュメントや、多くのオンラインチュートリアル、コミュニティフォーラムなどを活用することで、徐々に理解を深めることができます。もし、短期間で確実にシステムを構築したい場合は、GAS開発の経験があるエンジニアや外部の専門家に依頼することも検討しましょう。ただし、依頼する場合でも、ご自身の業務フローを明確に説明できるようにしておくことが重要です。

Q2: 承認者が複数いる場合(例:部長→役員)のフローはどのように実装しますか?

A2: 承認者を複数設定する場合、いくつかの方法が考えられます。

  1. ステータス管理による段階的承認: スプレッドシートの「ステータス」列を「一次承認待ち」「二次承認待ち」「承認済」のように複数用意し、GASで各ステータスに応じた承認者へメールを送信します。一次承認者が承認したらステータスを「二次承認待ち」に変更し、二次承認者へ通知する、といった流れです。
  2. 承認者リストの動的参照: 承認者リストシートに、申請内容(例:部署、金額)と承認者(メールアドレス)の対応表を作成しておき、GASがその表を参照して適切な承認者を決定します。
  3. メール内のリンク分岐: 一通のメールに一次承認者と二次承認者の両方へのリンクを含め、どちらかが承認したら次のステップへ進む、というロジックを組むことも可能ですが、管理が複雑になりがちです。

一般的には、ステータス管理による段階的承認が最も分かりやすく、実装しやすい方法です。

Q3: 領収書の画像ファイル(PDFなど)を添付して申請することはできますか?

A3: はい、可能です。最も一般的な方法は、領収書をGoogle Driveにアップロードし、そのファイルの共有リンクをスプレッドシートの「添付ファイルURL」列に記載する方法です。GASでメールを送信する際に、この共有リンクをメール本文に含めることで、承認者は領収書を確認できます。Google Driveの共有設定を適切に行い、承認者が必要なファイルにアクセスできるようにしておくことが重要です。

Q4: 承認・却下操作を、スプレッドシート上で直接行うことはできますか?

A4: はい、可能です。メールのリンクをクリックする代わりに、スプレッドシートの該当申請行にある「承認」ボタン(GASで作成したカスタムメニューや図形描画オブジェクトなど)をクリックしたらGASが実行され、ステータスが更新されるように実装することもできます。ただし、この場合、スプレッドシートにアクセスできる環境でなければ承認操作ができないため、承認者が外出先などで作業することが多い場合は、メール経由の方が利便性が高い場合があります。

まとめ

Google Apps Script(GAS)を活用することで、スプレッドシートとGmailを連携させ、経費精算プロセスに強力な自動承認フローを構築することが可能です。本記事では、GASの基礎から、ワークフロー設計、スプレッドシートの準備、具体的なスクリプト例、そしてメリット・デメリット、注意点、FAQに至るまで、網羅的に解説しました。この自動化により、経費精算業務の効率化、迅速化、精度向上はもちろん、ペーパーレス化やコスト削減といった多岐にわたる効果が期待できます。初期開発には学習コストや専門知識が必要となる場合もありますが、その投資に見合うだけの大きなリターンを得られる可能性を秘めています。ぜひ、本記事で得た知識を活かし、貴社の経費精算業務を次のレベルへと進化させてください。

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