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Pythonで銀行明細を解析し、サブスクリプションの二重払い・解約忘れを徹底的に検知する方法

Pythonで銀行明細を解析し、サブスクリプションの二重払い・解約忘れを徹底的に検知する方法

現代社会において、サブスクリプションサービスは生活を豊かにする一方で、その管理は複雑化しがちです。気づかないうちに複数のサービスで重複して課金されていたり、不要になったサービスを解約し忘れていたりすることはありませんか?これらの「隠れたコスト」は、積み重なると無視できない金額になります。本記事では、Pythonを活用して過去の銀行明細データを分析し、これらのサブスクリプション関連の無駄遣いを効率的かつ網羅的に検知する手法を、税務の専門家である税理士の視点から詳細に解説します。プログラミング初心者から経験者まで、実務で役立つ具体的なステップと考慮事項を網羅し、読者の皆様がご自身の家計を最適化するための一助となることを目指します。

導入: サブスクリプション経済の光と影

音楽、映像配信、ソフトウェア、ニュース、フィットネス、さらには食料品や日用品まで、サブスクリプションモデルはあらゆる分野に浸透しています。手軽に利用できる反面、その数は増加の一途をたどり、個々の利用料金は少額でも、全体として家計を圧迫する要因となり得ます。特に、無料トライアル期間終了後の自動更新や、複数のデバイス・アカウントでの重複契約、利用頻度の低いサービスへの継続的な支払いなどは、見落とされがちな「サブスクリプションの影」です。

これらの問題を解決する鍵は、自身の支出パターンを正確に把握することにあります。銀行明細は、過去のすべての取引履歴を記録した、まさに「お金の履歴書」です。この膨大なデータの中から、サブスクリプションに関連する定期的な引き落としを特定し、そのパターンを分析することで、二重払い(重複契約)や解約忘れ(継続課金)を効率的に見つけ出すことが可能になります。Pythonは、このようなデータ分析タスクにおいて、その強力なライブラリ群と柔軟性から、非常に強力なツールとなります。

基礎知識: 銀行明細データとPythonの基本

銀行明細データの形式と取得方法

銀行明細データは、通常、CSV(Comma Separated Values)形式またはExcel形式でダウンロードできます。多くの銀行ウェブサイトでは、利用明細をCSVやExcelファイルとしてエクスポートする機能を提供しています。取得する期間は、最低でも過去1年間、できれば2~3年分あると、より精度の高い分析が可能になります。データには、取引日、摘要(取引内容の説明)、引き落とし額、預け入れ額などの情報が含まれます。この「摘要」欄に、サブスクリプションサービスの名前や「月額利用料」「年間購読」といったキーワードが含まれていることが、分析の糸口となります。

Pythonの基本: データ分析に必要なライブラリ

Pythonで銀行明細データを分析するには、主に以下のライブラリが活用されます。

  • Pandas: データ分析のデファクトスタンダードとも言えるライブラリです。CSVやExcelファイルの読み込み、データフレーム(表形式データ)の操作、クリーニング、集計などを効率的に行えます。
  • NumPy: 数値計算を高速に行うためのライブラリで、Pandasの基盤としても利用されています。
  • Matplotlib / Seaborn: データの可視化を行うためのライブラリです。分析結果をグラフで表現することで、傾向や異常値を直感的に把握しやすくなります。

これらのライブラリは、pipというPythonのパッケージ管理システムを使って簡単にインストールできます(例: pip install pandas numpy matplotlib seaborn)。

詳細解説: Pythonによるサブスクリプション検知の実装

ステップ1: 銀行明細データの読み込みと前処理

まず、ダウンロードした銀行明細データをPandasを使って読み込みます。データ形式に応じて、pd.read_csv()pd.read_excel()関数を使用します。読み込んだデータは、分析に適した形に整形する必要があります。具体的には、以下の処理を行います。

  • 不要な列・行の削除: 分析に関係のない列(例: 残高、摘要欄以外の詳細情報)や、ヘッダー行、合計行などを削除します。
  • データ型の変換: 取引日を日付型(datetime型)、金額を引き落とし額・預け入れ額を数値型(float型やint型)に変換します。これにより、日付でのフィルタリングや数値計算が可能になります。
  • 欠損値の処理: 欠損しているデータがあれば、適切に処理します(削除、補完など)。
  • 摘要欄の正規化: 同じサービスでも、摘要欄の表記が微妙に異なる場合があります(例: 「AMAZON PRIME」「アマゾンプライム」「AMZN PRIME」)。後述するキーワードマッチングのために、これらの表記をある程度統一する処理(例: 大文字・小文字の統一、不要な記号の削除)を行うと、検知精度が向上します。

例えば、摘要欄をすべて小文字に変換するには、PandasのSeriesオブジェクトの.str.lower()メソッドを使用します。


df['摘要'] = df['摘要'].str.lower()

ステップ2: サブスクリプション取引の特定

次に、サブスクリプションサービスに該当する可能性のある取引を特定します。これは、摘要欄に含まれるキーワードを手がかりに行います。一般的に、サブスクリプションサービスは「月額」「年額」「サブスクリプション」「メンバーシップ」「オンライン」「ストリーミング」「クラウド」などのキーワードや、具体的なサービス名(Netflix, Spotify, Adobe, Microsoft 365など)を含んでいることが多いです。

これらのキーワードのリストを作成し、摘要欄にそれらが含まれる行をフィルタリングします。Pandasの.str.contains()メソッドが便利です。


subscription_keywords = ['月額', '年額', 'サブスク', 'prime', 'members', 'cloud', 'stream', 'netflix', 'spotify', 'adobe', 'microsoft']

# いずれかのキーワードが含まれる行を抽出
subscription_df = df[df['摘要'].str.contains('|'.join(subscription_keywords), case=False, na=False)]

case=Falseを指定することで大文字・小文字を区別せず、na=Falseで欠損値を除外します。'|'.join(subscription_keywords)は、キーワードをOR条件で結合するための正規表現パターンを作成します。

ステップ3: 定期的な引き落としパターンの分析

サブスクリプションの特徴は、一定期間(月、年など)ごとに同じ金額が引き落とされることです。この定期性を利用して、重複課金や解約忘れを検知します。

まず、特定したサブスクリプション取引の中から、同じ摘要(サービス名)で、かつ引き落とし額がほぼ同じ(または完全に同じ)取引をグループ化します。さらに、それらの取引が発生した日付を調べ、一定期間内に複数回発生しているかを確認します。

例えば、同じサービス名で、1ヶ月以内に2回以上請求がある場合、二重払いの可能性があります。また、過去1年間で1回しか請求がないのに、摘要が「月額」となっている場合、解約忘れの可能性があります(ただし、年額契約や不定期請求の場合もあるため、注意が必要です)。

より高度な分析として、各サービスについて、取引間隔を計算し、その中央値や標準偏差を求めます。月額サービスであれば、取引間隔は概ね30日±数日になるはずです。この間隔が極端に短い(例: 10日以内)場合や、本来月額のはずが年額(約365日)間隔になっているのに、摘要が「月額」となっている場合などは、異常としてフラグを立てることができます。


# 摘要ごとにグループ化し、各グループ内の取引日をリスト化
subscription_analysis = subscription_df.groupby('摘要')['取引日'].apply(list)

for summary, dates in subscription_analysis.items():
    # 取引日をソート
    dates.sort()
    
    # 取引間隔を計算 (日単位)
    intervals = [(dates[i] - dates[i-1]).days for i in range(1, len(dates))]
    
    # 月額サービスを想定し、1ヶ月以内(例: 30日±7日)に複数回請求がないかチェック
    if len(dates) > 1:
        # 例: 1ヶ月以内に2回以上請求がある場合
        for i in range(1, len(dates)):
            if (dates[i] - dates[i-1]).days <= 30: # 30日以内
                print(f"[警告] サービス '{summary}' で短期間に複数回請求があります: {dates[i-1]} と {dates[i]}")
        
        # 例: 1年以上請求がないのに継続課金されているか (解約忘れの可能性)
        # (このチェックは、過去のデータ全体を見て、最後に課金された日付と現在を比較する必要がある)
        last_charge_date = dates[-1]
        if (datetime.now() - last_charge_date).days > 365:
             print(f"[注意] サービス '{summary}' は最後に課金されてから1年以上経過しています。解約忘れの可能性があります。")

    # 年額サービスの場合のチェックなども追加可能

ステップ4: 結果の可視化とレポーティング

分析結果を視覚化することで、問題点をより明確に把握できます。例えば、

  • サブスクリプションサービスの利用状況グラフ: 各サービスごとに月間・年間の支出額を棒グラフや円グラフで表示し、どのサービスに最もお金を使っているかを可視化します。
  • 取引間隔のヒストグラム: 各サービスごとの取引間隔の分布をヒストグラムで表示し、定期的な支払いパターンから外れているものを特定します。

MatplotlibやSeabornライブラリを使って、これらのグラフを作成します。最終的には、検知された重複課金や解約忘れの疑いがある取引リストを生成し、ユーザーが確認・対応できるようにレポートとして出力します。

具体的なケーススタディ・計算例

ある個人の過去1年間の銀行明細(CSV形式)があると仮定します。データには「取引日」「摘要」「金額」の列が含まれています。

シナリオ1: 二重払いの検知

Pythonスクリプトを実行した結果、以下の取引が検出されたとします。

  • 2023/01/15: AMZN PRIME MEMB – ¥500
  • 2023/01/15: AMAZON PRIME – ¥500
  • 2023/02/15: AMZN PRIME MEMB – ¥500
  • 2023/02/15: AMAZON PRIME – ¥500

この場合、同じ日に「AMZN PRIME MEMB」と「AMAZON PRIME」という類似した摘要で、同じ金額の請求が2回発生しています。これは、Amazon Primeの会員費が二重に請求されている可能性が高いことを示唆します。スクリプトは、摘要欄の正規化(例: 両方とも「amazon prime」に統一)と、同一日における複数回請求の検出ロジックにより、この問題を指摘します。

シナリオ2: 解約忘れの検知

以下の取引が検出されたとします。

  • 2022/04/01: NETFLIX MONTHLY FEE – ¥1,500
  • 2022/05/01: NETFLIX MONTHLY FEE – ¥1,500
  • 2022/11/01: NETFLIX MONTHLY FEE – ¥1,500
  • (2022年12月以降、Netflixからの請求はなし)

スクリプトが過去1年分のデータを分析した結果、Netflixの最終請求日が2022年11月1日であり、その後1年以上請求がないことが判明しました。しかし、摘要欄には依然として「NETFLIX MONTHLY FEE」と表示されています。これは、ユーザーがNetflixのサブスクリプションを解約したつもりでも、実際には解約されておらず、最後の請求から1年以上経過している(あるいは、解約手続きが完了していなかった)可能性を示唆します。ただし、これはあくまで「可能性」であり、ユーザー自身がNetflixアカウントを確認する必要があります。もし、ユーザーが意図的に解約していたのであれば、この警告は無視できます。

計算例: 取引間隔の分析

あるクラウドストレージサービスの月額料金が、以下の日付で請求されているとします。

  • 2023/01/10
  • 2023/02/11
  • 2023/03/10
  • 2023/04/12

これらの日付から計算される取引間隔(日数)は、以下のようになります。

  • 2023/02/11 – 2023/01/10 = 32日
  • 2023/03/10 – 2023/02/11 = 27日
  • 2023/04/12 – 2023/03/10 = 33日

これらの間隔(32, 27, 33日)は、月額サービスとしては妥当な範囲(例えば30日±5日)に収まっています。しかし、もしこれらの間隔が例えば「15日」「70日」「20日」といったばらつきが大きい場合、スクリプトは「支払いパターンの異常」としてフラグを立て、ユーザーに詳細な確認を促すことができます。

メリットとデメリット

メリット

  • コスト削減: 二重払いによる無駄な支出を具体的に特定し、削減できます。
  • 家計管理の効率化: 膨大な取引履歴から、サブスクリプション関連の支出だけを自動的に抽出し、分析の手間を大幅に削減できます。
  • 不正利用の検知: 身に覚えのないサブスクリプション課金を発見し、不正利用の早期発見につながる可能性があります。
  • データに基づいた意思決定: 自身の支出パターンを客観的に把握することで、どのサブスクリプションサービスが本当に必要か、見直しの判断材料となります。
  • 自動化による継続的な管理: スクリプトを定期的に実行することで、継続的にサブスクリプションの管理を行うことが可能です。

デメリット

  • 初期設定の手間: Pythonの環境構築やスクリプト作成には、ある程度の知識と時間が必要です。
  • データの質への依存: 銀行明細の摘要欄の表記が不規則だったり、情報が不足している場合、検知精度が低下します。
  • 誤検知の可能性: キーワードマッチングやパターン分析は、あくまで確率的なものです。正規の取引を誤って「二重払い」や「解約忘れ」と判断してしまう(False Positive)可能性があります。
  • プライバシーとセキュリティ: 銀行明細データは機密情報です。データをローカル環境で安全に管理する必要があります。
  • 複雑なサブスクリプションへの対応限界: 家族共有アカウント、法人契約、ポイント利用による実質無料期間など、複雑な課金体系を持つサービスには、単純なスクリプトでは対応しきれない場合があります。

よくある間違い・注意点

  • 摘要欄の表記ゆれを軽視する: 「AMAZON」「AMZN」「AMAZON.CO.JP」など、同じサービスでも表記が異なる場合が多いです。これらを考慮しないと、検知漏れが発生します。正規化処理は非常に重要です。
  • キーワードリストが不十分: 一般的なキーワードだけでなく、自身が利用している可能性のあるサービス固有のキーワード(例: 特定のゲーム、ソフトウェア名)を追加する必要があります。
  • 金額の一致のみを条件とする: サブスクリプションによっては、利用プランの変更などで金額が変わることがあります。完全に一致する金額だけでなく、「ほぼ同じ金額」を許容する閾値設定も検討すると良いでしょう。
  • 日付のフォーマットを無視する: 銀行明細の「日付」列は、様々なフォーマット(YYYY-MM-DD, MM/DD/YYYYなど)で提供されます。Pandasで正しくdatetime型に変換しないと、日付計算ができません。
  • 解約忘れの判断を鵜呑みにする: スクリプトが「解約忘れの可能性」を指摘しても、それはあくまでデータからの推測です。最終的には、各サービスのマイページなどで解約状況を必ず確認する必要があります。
  • 無料トライアル期間の扱い: 無料トライアル期間終了直前の課金は、検知ロジックによっては見逃される可能性があります。トライアル期間終了日を記録・管理する仕組みも検討すると良いでしょう。
  • データセキュリティの軽視: ダウンロードした銀行明細データは、パスワード保護やアクセス制限など、適切なセキュリティ対策を施した環境で取り扱うべきです。

よくある質問 (FAQ)

Q1: Pythonの知識がほとんどありません。それでもこの分析は可能ですか?

A1: 完全に初心者の方には、まずPythonの基本的な学習(特にPandasライブラリの使い方)から始めることをお勧めします。しかし、この記事で提供しているコード例や解説を参考に、コピペから始めて徐々にカスタマイズしていくことは可能です。オンライン学習プラットフォームや書籍などで、PythonとPandasの入門コースを受講すると、よりスムーズに進められるでしょう。また、将来的には、よりユーザーフレンドリーなGUIツールや、専門家向けのサービスが登場する可能性もあります。

Q2: 銀行によってはCSV/Excelのエクスポート機能がない、または摘要欄の情報が少ないのですが、どうすればよいですか?

A2: 銀行によっては、データのエクスポート機能が制限されていたり、摘要欄の情報が抽象的で分析が難しい場合があります。その場合、以下の対応が考えられます。

  • 他の金融機関の明細も併用する: 複数の銀行口座やクレジットカードを利用している場合、それらの明細を統合して分析することで、全体像を把握しやすくなります。
  • 手動での補完: 分析スクリプトで特定できなかった明細について、定期的に手動で確認し、不明な引き落としがあれば、その都度サービス提供元に問い合わせて内容を確認する手間が必要になります。
  • 家計簿アプリの活用: 銀行連携機能を持つ家計簿アプリを利用すると、明細の自動取得やカテゴリ分類を自動で行ってくれるため、手動での管理負担が軽減されます。ただし、アプリによってはサブスクリプションの特定精度に限界がある場合もあります。
  • 銀行への要望: 多くのユーザーが同様の要望を持っていれば、銀行側が将来的に明細データの提供方法を改善する可能性があります。

Q3: このスクリプトは、クレジットカードの明細にも適用できますか?

A3: はい、クレジットカードの明細にも適用可能です。クレジットカードの明細も、銀行明細と同様にCSVやExcel形式でダウンロードできることが多く、取引日、摘要、金額といった基本的な情報が含まれています。基本的な分析ロジック(キーワードマッチング、定期的な引き落としパターンの分析)は、クレジットカード明細データに対しても有効です。ただし、クレジットカード特有の請求サイクル(例: 月末締め翌月支払い)や、利用店名の表記ゆれなどを考慮する必要がある場合もあります。分析対象とするデータの形式や内容に合わせて、スクリプトの微調整が必要になることがあります。

まとめ

Pythonを用いた銀行明細データの分析は、サブスクリプションサービスの二重払いや解約忘れといった「隠れたコスト」を効率的に検知するための強力な手法です。Pandasライブラリを活用することで、データの読み込み、前処理、キーワードによるフィルタリング、定期的な支払いパターンの分析といった一連のプロセスを自動化できます。これにより、家計の無駄を削減し、より健全な財務管理を実現することが可能になります。

もちろん、この手法には初期設定の手間や、データの質、誤検知のリスクといったデメリットも存在します。しかし、これらの注意点を理解し、適切な前処理と分析ロジックを実装することで、その効果は計り知れません。本記事で解説したステップと具体例を参考に、ぜひご自身の家計管理にPythonを導入し、サブスクリプションコストの最適化に挑戦してみてください。定期的な見直しとPythonによる分析を習慣づけることで、より賢く、効率的なお金との付き合い方ができるようになるはずです。

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