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FBARとForm 8938(FATCA)の違い:報告基準額・対象資産・期限・罰則を一覧で比較【2026年版】

日本に銀行口座や証券口座、貯蓄型の保険を持っている米国の納税者(米国市民、グリーンカード保持者、183 日ルールを満たす駐在員など)は、毎年 FBAR と Form 8938 の 2 つを確認する必要があります。どちらも「海外の資産を報告する書類」ですが、提出先、基準額、対象になる資産、罰則がすべて違います。

IRS は「Form 8938 の提出義務は、FBAR(FinCEN Form 114)を提出する義務に代わるものではない」と明記しています。この記事では、IRS と FinCEN の公表資料をもとに 2 つの違いを一覧表で整理し、日本の預金・証券・保険・年金がそれぞれどちらの対象になるかを、円換算の具体例つきで解説します。

2025 年分の FBAR の最終期限は、自動延長後の 2026 年 10 月 15 日です。まだ提出していない方は、早めに確認してください。

結論:FBAR と Form 8938 の違いを 3 行で

  • FBAR(FinCEN Form 114):海外の金融口座の合計が、年のどこかで $10,000 を超えたら提出します。提出先は FinCEN で、確定申告とは別に電子提出します。
  • Form 8938(FATCA):海外の金融資産の合計が基準額(米国在住の独身なら、年末 $50,000 超または年中 $75,000 超)を超えたら、確定申告書に添付して IRS に提出します。
  • 両方の条件に当てはまる人は両方とも提出します。同じ日本の口座を両方に記載するのは普通のことです。

比較表:FBAR と Form 8938 の違い一覧

項目FBAR(FinCEN Form 114)Form 8938(FATCA)
提出先米国財務省の FinCEN(金融犯罪取締ネットワーク)。BSA E-Filing System で電子提出IRS。確定申告書(Form 1040 など)に添付
提出する人米国人(U.S. person):米国市民・居住者、米国の法人・パートナーシップ・信託・遺産など米国市民・居住者などの「特定個人」と、一部の米国の法人・パートナーシップ・信託(特定国内事業体)
基準額海外口座の合計が、年中のどこかで $10,000 超居住地と申告ステータスで異なる(米国在住の独身:年末 $50,000 超または年中 $75,000 超)
確定申告が不要な年基準を超えれば提出が必要(所得の有無とは無関係)提出不要
対象海外の金融口座(預金・証券・解約返戻金のある保険など)海外の金融資産(口座に加え、直接保有する外国株式やパートナーシップ持分なども)
署名権限だけの口座対象対象外
期限4 月 15 日。10 月 15 日まで自動延長確定申告書と同じ(延長した場合は延長後の期限)
ドルへの換算12 月 31 日の米国財務省のレート課税年度の最終日の米国財務省のレート
主な罰則故意でない違反:1 報告あたり最大 $16,536/故意:$165,353 または口座残高の 50% の大きい方未提出:$10,000(IRS の通知後も出さなければ最大 $50,000 を追加)/過少申告:不足税額の 40%

Form 8938 の基準額(居住地・申告ステータス別)

区分年末の合計がまたは年中のどこかで
米国在住・独身/夫婦個別申告$50,000 超$75,000 超
米国在住・夫婦合算申告$100,000 超$150,000 超
米国外在住・独身/夫婦個別申告$200,000 超$300,000 超
米国外在住・夫婦合算申告$400,000 超$600,000 超

「米国外在住」の基準を使えるのは、税務上の拠点(tax home)が外国にあり、さらに次のどちらかに当てはまる人です。

  • 課税年度をまるごと含む期間、外国の居住者(bona fide resident)である米国市民
  • 連続する 12 か月のうち 330 日以上、外国に滞在している米国市民・居住者

夫婦合算申告の場合は、夫婦 2 人の資産を合わせた金額で判定し、Form 8938 も 1 枚にまとめます。

2025 年分を円に換算すると(1 ドル=156.61 円)

FBAR も Form 8938 も、円の金額は年末の米国財務省のレート(Treasury Reporting Rates of Exchange)でドルに換算します。2025 年 12 月 31 日の日本円のレートは 1 ドル=156.61 円です。2025 年分の基準額を円にすると、おおよそ次のとおりです。

基準ドル円の目安
FBAR$10,000 超約 157 万円超
Form 8938(米国在住・独身)年末 $50,000 超/年中 $75,000 超約 783 万円超/約 1,175 万円超
Form 8938(米国在住・夫婦合算)年末 $100,000 超/年中 $150,000 超約 1,566 万円超/約 2,349 万円超
Form 8938(米国外在住・独身)年末 $200,000 超/年中 $300,000 超約 3,132 万円超/約 4,698 万円超
Form 8938(米国外在住・夫婦合算)年末 $400,000 超/年中 $600,000 超約 6,264 万円超/約 9,397 万円超

FBAR では、口座ごとの「年間の最高残高」をこのレートでドルに換算し、1 ドル未満は切り上げて記入します(FinCEN の指示)。口座が複数ある場合は、各口座の最高残高を合計して $10,000 を超えるかどうかを確認するのが一般的です。年末の残高が少なくても、年の途中で大きな入金があれば対象になる点に注意してください。

日本の資産はどちらの対象?

IRS の比較表をもとに、日本の方が持っていることの多い資産を整理しました。

資産FBARForm 8938
日本の銀行口座(普通預金・定期預金)対象対象
日本の証券口座(特定口座・一般口座・NISA 口座)対象対象
日本の投資信託対象対象
貯蓄型の生命保険・個人年金保険(解約返戻金があるもの)対象対象
日本企業の株式を、証券口座を通さずに直接保有(非上場株など)対象外対象
外国のパートナーシップの持分対象外対象
外国のヘッジファンド・プライベートエクイティ対象外対象
署名権限だけがある口座(勤務先の法人口座など)対象対象外
米国の金融機関の海外支店の口座対象対象外
日本の公的年金(国民年金・厚生年金)対象外対象外
直接保有する不動産・外貨の現金・金地金対象外対象外
  • 日本の投資信託や ETF は、米国税法上の PFIC(パッシブ外国投資会社)に当たることが多く、FBAR・Form 8938 とは別に Form 8621 の確認が必要です(日本の投資信託と PFIC/NISA・iDeCo と PFIC)。
  • 貯蓄型保険の詳しい扱いは 日本の貯蓄型生命保険と FBAR/FATCA 報告 で解説しています。
  • Form 3520、5471、8621、8865 などで期限内に報告した資産は、Form 8938 に重ねて記載する必要はありません(どの書類で報告したかは Form 8938 に記入します)。
  • 従業員持株会、iDeCo、企業年金(確定拠出・確定給付)は、IRS の比較表に個別の記載がなく、契約や名義の形によって扱いが変わります。明細を用意して、専門家に確認してください。

ケース別:あなたはどちらを出す?(2025 年分)

1 ドル=156.61 円で換算しています(ドルは 1 ドル未満を切り上げ)。

ケース 1:米国在住・独身。日本の銀行口座が 2 つ

年間の最高残高は A 銀行が 120 万円($7,663)、B 銀行が 80 万円($5,109)。どちらも 1 つだけなら $10,000 以下ですが、合計は $12,772 で $10,000 を超えます。

→ FBAR:必要/Form 8938:不要($50,000 に届かないため)

ケース 2:米国在住・夫婦合算申告。預金・投資信託・保険がある

年末の残高は、日本の預金 900 万円($57,468)、証券口座の投資信託 1,000 万円($63,853)、貯蓄型保険の解約返戻金 600 万円($38,312)。合計は $159,633 で、夫婦合算の基準(年末 $100,000 超)を超えます。

→ FBAR:必要/Form 8938:必要。投資信託は PFIC として Form 8621 の確認も必要です。FBAR は夫婦それぞれが自分の口座について提出します(すべての海外口座が共同名義の場合は 1 通にまとめられます)。

ケース 3:日本在住の米国市民・独身

日本の預金と証券口座の合計は、1 年を通じて約 2,000 万円($127,706)でした。

→ FBAR:必要/Form 8938:不要(米国外在住の基準は年末 $200,000 超・年中 $300,000 超のため)

ケース 4:米国在住・独身。日本の非上場株を直接保有

日本の銀行口座の残高は最高でも 100 万円($6,386)。ほかに、実家の会社の株式を直接保有しており、年末の評価額は 1,000 万円($63,853)です。

→ FBAR:不要(口座の合計が $10,000 以下で、直接保有の株式は FBAR の対象外)/Form 8938:必要(株式だけで年末 $50,000 を超えるため)。「FBAR が不要なら何も出さなくてよい」とはならない典型例です。

期限と提出方法

  • FBAR:対象年の翌年 4 月 15 日が期限で、10 月 15 日まで自動で延長されます(申請は不要)。2025 年分は 2026 年 10 月 15 日が最終期限です。FinCEN の BSA E-Filing System で電子提出し、確定申告書と一緒には出しません。
  • Form 8938:確定申告書(Form 1040 など)に添付して提出します。期限は確定申告書と同じで、Form 4868 で延長した場合は 10 月 15 日です。確定申告をする必要がない年は、基準額を超えていても提出は不要です。
  • 夫婦の場合:Form 8938 は夫婦合算申告なら 1 枚です。FBAR は原則として各自が提出しますが、すべての海外口座が夫婦の共同名義で、配偶者がそれらを期限内に報告する場合は 1 通にまとめられます。

罰則(2026 年 10 月時点)

FBAR の罰則

  • 故意でない違反:1 報告(1 年分)あたり最大 $16,536。2023 年の米国最高裁判決(Bittner v. United States)で、口座ごとではなく報告ごとに計算すると判断されました。
  • 故意の違反:$165,353 または違反時の口座残高の 50% のいずれか大きい額。刑事罰の対象になることもあります。

金額は、FinCEN が 2025 年 1 月 17 日に公表したインフレ調整後の上限です(法律上の元の金額は $10,000 と $100,000)。

Form 8938 の罰則

  • 未提出・記載漏れ:$10,000
  • IRS から通知を受けて 90 日たっても提出しない場合:30 日ごとに $10,000 を追加(追加分は最大 $50,000)
  • 報告しなかった資産に関係する過少申告:不足した税額の 40% の加算税
  • 時効の延長:報告しなかった資産からの所得の申告漏れが $5,000 を超えると、IRS が税額を決められる期間が 6 年に延びます。また Form 8938 を出していない年は、提出してから 3 年たつまで時効が完成しないことがあります。

FBAR と Form 8938 の罰則は別々の制度によるものなので、両方を出していなければ、両方の罰則の対象になり得ます。

よくある誤解

よくある誤解正しくは
FBAR を出したので Form 8938 は不要別の制度です。IRS も、Form 8938 の提出義務は FBAR の義務に代わるものではないと明記しています。
確定申告をしなくてよい人は FBAR も不要FBAR は確定申告とは別の制度です。所得がなくても、口座の合計が $10,000 を超えれば提出します。
口座ごとに $10,000 を超えなければ大丈夫判定は全口座の合計です。ケース 1 のように、少額の口座 2 つでも対象になります。
日本の年金も報告が必要国民年金・厚生年金などの公的年金は、FBAR・Form 8938 のどちらの対象にもなりません。
換算は自分の銀行のレートでよい米国財務省が公表する年末のレートを使います。
ほとんど使っていない口座は関係ない休眠口座や残高の少ない口座も合計に含めます。

出し忘れていた場合は

故意ではなく出し忘れていた場合は、IRS の Streamlined Filing Compliance Procedures(簡易手続)を使える場合があります。直近 3 年分の確定申告(未提出分・修正分)と、直近 6 年分の FBAR を提出する手続きです。

  • 米国外に住んでいる方(Streamlined Foreign Offshore Procedures):直近 3 年のいずれかの年に、米国に住居がなく 330 日以上米国外にいた方が対象です。手続きどおりに提出すれば、FBAR の罰則や加算税は課されません。
  • 米国に住んでいる方(Streamlined Domestic Offshore Procedures):海外の金融資産の最高合計額の 5% の罰則(miscellaneous offshore penalty)がかかります。

以前の OVDP(自主開示プログラム)は 2018 年 9 月 28 日に終了しています。また、IRS の調査が始まると簡易手続は使えないため、気づいた時点で早めに相談することをおすすめします。詳しくは FBAR/FATCA の未申告と Streamlined Procedure をご覧ください。

申告の前に用意するもの

  • 日本のすべての口座・保険の一覧(金融機関名、支店の住所、口座番号、名義)
  • 口座ごとの年間の最高残高(通帳、取引履歴、年間取引報告書など)
  • 年末の残高・評価額(Form 8938 用)
  • 投資信託・ETF の取引明細(PFIC の確認用)
  • 勤務先などで署名権限だけを持っている口座の情報

最高残高の集計や年末レートでの換算は、年末レートで残高を一括換算する方法 も参考にしてください。

FBAR・Form 8938 は CLT NY INC. にご相談ください

CLT NY INC. では、IRS 公認の米国税理士(Enrolled Agent)が日本の口座・保険・投資信託の明細を確認し、FBAR と Form 8938 の要否の判定から作成・提出まで対応します。2025 年分の FBAR の最終期限は 2026 年 10 月 15 日です。お問い合わせはこちら。他の事務所から乗り換える方は、乗り換えキャンペーンもご利用いただけます。

関連記事

出典:IRS「Comparison of Form 8938 and FBAR requirements」/IRS「Instructions for Form 8938」/IRS「Report of Foreign Bank and Financial Accounts (FBAR)」/FinCEN「Reporting Maximum Account Value」/米国財務省「Treasury Reporting Rates of Exchange」/Federal Register「FinCEN; Inflation Adjustment of Civil Monetary Penalties」(2025 年 1 月 17 日)/米国最高裁「Bittner v. United States」(2023 年)/IRS「Streamlined Filing Compliance Procedures」。最終更新:2026 年 10 月 5 日。この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の税務アドバイスではありません。

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