年末やボーナス月の給与明細を見て、「ボーナスから思ったより多く引かれている」と感じたことはありませんか。米国では、ボーナスやコミッションなどの Supplemental Wages(補足的賃金)について、通常の給与とは別の源泉徴収ルールが定められています。
この記事は、米国の会社から W-2 で給与を受け取っている駐在員・永住者・現地採用の方に向けて、連邦所得税の定率 22%/37%、合算方式(Aggregate Method)、社会保障税・メディケア税(FICA)、ニューヨーク州・ニューヨーク市の補足的賃金の源泉税率、そして「源泉徴収は最終的な税額ではない」という点を整理します。
年末賞与を 12 月に支払う会社も多いため、10〜11 月は Form W-4(連邦)や Form IT-2104(ニューヨーク州・市)を見直すのに適した時期です。年内に残っている給与の回数が多いほど、調整の幅も大きくなります。
結論/要点
- ボーナスを通常の給与と区別して支払う場合、雇用主は連邦所得税を一律 22% で源泉徴収できます。その年の補足的賃金が $1 million を超えた部分は、37% での源泉が義務です。
- もう一つの方法である合算方式(Aggregate Method)は、ボーナスと給与を「1 回分の給与」として計算するため、その月だけ高い税率で源泉されることがあります。
- ボーナスにも社会保障税 6.2%(2026 年は賃金 $184,500 まで)とメディケア税 1.45% がかかります。ニューヨーク州の補足的賃金の源泉税率は 11.70%、ニューヨーク市は 4.25% です。
- 源泉徴収は前払いにすぎず、最終的な税額は確定申告(連邦は Form 1040、ニューヨーク州は IT-201 など)で計算されます。多すぎれば還付、少なければ追加納付です。
- 年間でずれが大きくなりそうなら、Form W-4 の Step 4(c)(追加の源泉額)などで、通常の給与からの源泉を調整します。
Supplemental Wages(補足的賃金)とは
IRS の Publication 15(2026 年版、雇用主向けの税務ガイド)は、補足的賃金を「通常の賃金(regular wages)ではない、従業員への賃金の支払い」と説明し、次のような例を挙げています。
- ボーナス、コミッション(歩合給)
- 残業代(overtime pay)
- 未使用の病気休暇の買い取り
- 退職金(severance pay)、表彰・賞品
- バックペイ(さかのぼって支払われる賃金)、遡及昇給分
- 雇用主に申告したチップ
- 控除の対象にならない引越費用の支払い
- 課税対象のフリンジベネフィット(現物給与)、精算を求めない経費手当(nonaccountable plan による手当)
ただし、残業代とチップについては、雇用主が通常の賃金として扱うこともできます。また、通常の給与に上乗せして、未使用の有給休暇を年 1 回まとめて買い取るような支払いも、補足的賃金として扱われます。
どの方法で源泉徴収するかは、主に「ボーナスが通常の給与と区別して支払われるかどうか」で決まります。
連邦所得税の源泉徴収:3 つの方法
| 支払い方 | 連邦所得税の源泉徴収 |
|---|---|
| ボーナスを給与と一緒に払い、金額を区別しない | 合計額を通常の給与 1 回分として計算 |
| ボーナスを区別して払い、その年か前年に通常の給与から所得税を源泉している | 雇用主が「定率 22%」か「合算方式」を選ぶ |
| ボーナスを区別して払い、その年も前年も通常の給与から所得税を源泉していない | 合算方式のみ |
| その年の補足的賃金の累計が $1 million を超えた部分 | 37% の定率が義務(W-4 の内容は考慮しない) |
定率方式(22%)
多くの会社がボーナスに使う方法です。Publication 15 は「一律 22%(他の割合は不可)」と定めています。$10,000 のボーナスなら、連邦所得税として $2,200 が源泉されます。あなたの実際の税率帯が 12% でも 24% でも、源泉徴収の段階では同じ 22% です。
OBBBA(2025 年 7 月 4 日に成立した One Big Beautiful Bill Act、P.L. 119-21)が個人所得税率を恒久化したため、2026 年も 22%($1 million 超の部分は 37%)のままであると Publication 15 に記載されています。
合算方式(Aggregate Method)
ボーナスを同じ支払期間の給与(同時に払う給与がなければ、当期または前期の給与)に足し、合計を 1 回分の給与として源泉額を計算します。そこから通常の給与ですでに源泉した額を差し引き、残りをボーナスから源泉します。
給与計算では、1 回分の給与に年間の支払回数を掛けて「年額」に換算してから税額を計算します(Publication 15-T)。月給 $10,000 の人に同じ月に $20,000 のボーナスが出ると、システム上は「月給 $30,000、年収 $360,000 の人」として計算されます。累進税率のため、その月の源泉額が年間の実際の税率よりかなり高く見えることがあります。
$1 million を超える部分は 37%
同じ雇用主(共通の支配下にある事業を含む)からその年に受け取る補足的賃金の累計が $1 million を超えると、超えた部分には 37% の源泉徴収が義務付けられ、Form W-4 の内容は考慮されません。多額の賞与や退職金を受け取る年は、この点も確認しておきましょう。
社会保障税・メディケア税(FICA)もかかる
Publication 15 は、所得税をどの方法で源泉しても、補足的賃金は社会保障税・メディケア税・FUTA(連邦失業税)の対象になるとしています。2026 年の従業員負担は次のとおりです。
| 税目 | 2026 年の従業員負担 |
|---|---|
| 社会保障税(Social Security) | 6.2%(賃金 $184,500 まで) |
| メディケア税(Medicare) | 1.45%(上限なし) |
| 追加メディケア税 | 0.9%(同じ雇用主からの賃金が年 $200,000 を超えた支払期間から源泉) |
年の後半にボーナスが出る高所得の方は、賃金がすでに社会保障税の上限 $184,500 に達していて、ボーナスから 6.2% が引かれないことがあります。2026 年の社会保障税の従業員負担の上限額は $11,439($184,500 × 6.2%)です。転職などで 2 社以上から給与を受け取り、合計で上限を超えて源泉された場合は、超過分を確定申告で税額控除として取り戻せます。1 社だけで上限を超えて源泉された場合は、その会社に調整してもらう必要があります。
追加メディケア税の源泉は「同じ雇用主から $200,000 超」で始まりますが、実際の負担は Form 8959 で計算し、基準額は申告資格によって異なります(夫婦合算申告 $250,000、夫婦個別申告 $125,000、それ以外 $200,000。IRS Topic No. 560)。
ニューヨーク州・ニューヨーク市の補足的賃金の源泉税率
ニューヨーク州税務局(NYS Department of Taxation and Finance)の 2026 年版源泉徴収表(NYS-50-T-NYS と NYS-50-T-NYC。2026 年 1 月 1 日〜12 月 31 日に適用)にも、連邦とよく似たルールがあります。通常の給与から州税・市税を源泉している従業員に、区別したボーナスを払う場合、雇用主は次のどちらかを選べます。
| 定率方式 | 合算方式 | |
|---|---|---|
| ニューヨーク州 | 11.70% | 直近の給与と合算して税額を計算し、給与分の源泉額を差し引く |
| ニューヨーク市(市民税) | 4.25% | 同上 |
ニューヨーク市に住んでいる方は、州税と市税の両方が源泉されます。州の 2026 年版の表は、2025 年の州法(Chapter 59 of the Laws of 2025)による税率引き下げを反映して改訂されていますが、補足的賃金の定率は 11.70% とされています。
州・市の定率も源泉徴収のための率にすぎません。最終的な州税・市税はニューヨーク州の確定申告で計算され、差額は還付または追加納付になります。州・市の源泉額を調整したいときは、Form IT-2104 を会社に提出します。
源泉徴収は「最終的な税額」ではない
ボーナスも 1 年間の給与の一部です。確定申告(Form 1040)では、給与とボーナスを合わせた年間の課税所得に税率表を当てはめて税額を計算し、1 年間に源泉された額を差し引きます。源泉が多すぎれば還付、少なすぎれば追加納付となり、この精算は確定申告で行います。
そのため、ボーナスへの 22% は、人によって「取りすぎ」にも「不足」にもなります。IRS Publication 505 に掲載された 2026 年の税率表(単身)は次のとおりです。
| 課税所得(単身・2026 年) | 税率 |
|---|---|
| $0〜$12,400 | 10% |
| $12,400〜$50,400 | 12% |
| $50,400〜$105,700 | 22% |
| $105,700〜$201,775 | 24% |
| $201,775〜$256,225 | 32% |
| $256,225〜$640,600 | 35% |
| $640,600 超 | 37% |
課税所得が 12% 以下の税率帯に収まる方は、22% の源泉は多すぎる可能性があります。24% 以上の税率帯の方は、22% では足りない可能性があります。
不足が大きいと、確定申告での納付額が増えるだけでなく、予定納税不足のペナルティ(Form 2210)の対象になることもあります。Publication 505 は、源泉徴収と税額控除の合計が「2026 年の税額の 90%」と「2025 年の申告書の税額の 100%(2025 年の AGI が $150,000 超〔夫婦個別申告は $75,000 超〕の場合は 110%)」の少ない方に届かない場合、予定納税が必要になることがあると説明しています。
計算例:ボーナスの源泉と最終的な税額のずれ
例:ニューヨーク市在住、単身、標準控除のみ、ほかに所得なし、会社は定率方式を使うと仮定します(2026 年の連邦税率による概算です。州税・市税の最終的な税額は計算していません)。
まず、$10,000 のボーナスから源泉される額です。
| 項目 | 率 | $10,000 のボーナスの場合 |
|---|---|---|
| 連邦所得税 | 22% | $2,200 |
| 社会保障税 | 6.2% | $620 |
| メディケア税 | 1.45% | $145 |
| ニューヨーク州税 | 11.70% | $1,170 |
| ニューヨーク市税 | 4.25% | $425 |
| 合計 | 45.6% | $4,560 |
手取りは $5,440 です。「半分近く引かれた」と感じるのはこのためですが、このうち連邦・州・市の所得税の部分は前払いで、確定申告で精算されます。
次に、連邦所得税だけを 2 人で比べます。2026 年の単身の標準控除は $16,100 で、通常の給与からの源泉は正確だったと仮定します。
| A さん | B さん | |
|---|---|---|
| 年間の給与 | $60,000 | $180,000 |
| ボーナス | $10,000 | $30,000 |
| ボーナス前の課税所得 | $43,900 | $163,900 |
| ボーナス後の課税所得 | $53,900 | $193,900 |
| ボーナス分の実際の連邦所得税 | $1,550 | $7,200 |
| 22% で源泉された額 | $2,200 | $6,600 |
| 差額 | $650 の取りすぎ(還付) | $600 の不足(追加納付) |
A さんのボーナスは 12% の税率帯($6,500 分で $780)と 22% の税率帯($3,500 分で $770)にまたがるため、22% の源泉はやや多めです。B さんはボーナス全額が 24% の税率帯に入るため($30,000 × 24% = $7,200)、22% では足りません。高所得の方ほど、ボーナスの源泉は「多すぎる」のではなく「少なすぎる」ことがある点に注意してください。
年末までにできる見直し
- 不足しそうなとき:Form W-4 の Step 4(c) に、1 回の給与ごとの追加源泉額を記入します。Publication 505 は、不足見込み額を年内の残りの給与支払回数で割る方法を説明しています。
- 還付が大きくなりそうなとき:Step 4(b)(控除)などで、通常の給与からの源泉を減らせます。調整しなくても、取りすぎた分は確定申告で還付されます。
- IRS の Tax Withholding Estimator(IRS.gov/W4App)で、年間の税額と源泉額の見込みを試算できます。
- 提出のタイミング:新しい W-4 は、提出日から 30 日目以降に終わる最初の給与期間の開始までに反映されればよいとされています。12 月半ばの変更は、その年の給与に間に合わないことがあります。
- ニューヨーク州・市の源泉は Form IT-2104 で調整します。
- 日本から賞与が出る場合:グリーンカード保持者や実質的滞在テスト(Substantial Presence Test)を満たす方は米国の居住者として、全世界所得が課税対象です(Publication 519、505)。日本の本社から支払われる賞与に米国で源泉徴収がされていない場合は、米国の給与の W-4 で上乗せするか、予定納税(Form 1040-ES)で補う必要がないか確認しましょう。
よくある質問
ボーナスの 22% は、自分の税率が 22% という意味ですか?
いいえ。22% は源泉徴収のための一律の率です。実際の税率は、年間の課税所得と申告資格で決まります。
会社にボーナスの源泉を減らしてもらえますか?
定率方式は「22%(他の割合は不可)」と定められているため、率そのものは変えられません。合算方式の場合は、W-4 の内容が計算に反映されます。調整したいときは、W-4 で通常の給与からの源泉を変えるのが現実的です。
補足的賃金が $1 million を超えるとどうなりますか?
超えた部分は 37% の源泉が義務になり、W-4 の内容は考慮されません。共通の支配下にある事業からの支払いも合算して判定します。
ボーナスから社会保障税が引かれていないのはなぜですか?
その年の賃金が、すでに 2026 年の上限 $184,500 に達している可能性があります。メディケア税には上限がないため、引き続き 1.45% が源泉されます。
取りすぎた分はいつ戻りますか?
翌年の確定申告で、年間の税額と源泉額を精算した結果として還付されます。州税・市税も、州の確定申告で精算されます。
CLT NY INC. では、IRS 公認の米国税理士(Enrolled Agent)が日本語で、ボーナスを含む給与所得の確定申告、W-4・IT-2104 による源泉徴収の見直し、年末に向けた税額の試算に対応します。お問い合わせはこちら。
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出典:IRS Publication 15 (2026), Employer’s Tax Guide/IRS Publication 15-T (2026)/IRS Publication 505 (2026), Tax Withholding and Estimated Tax/IRS Publication 519 (2025)/IRS Topic No. 560, Additional Medicare Tax/2025 Instructions for Form 1040/NYS-50-T-NYS (1/26)/NYS-50-T-NYC (1/26)。2026 年 10 月時点の情報です。この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の税務アドバイスではありません。
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