米国で法人(C-Corp)やLLCを設立した後、「毎年いつ、何を、どこに提出するのか」を一覧で把握している方は意外と少ないものです。連邦(IRS)と州(登記州・事業実施州)で提出先も期限も異なり、1つでも忘れると延滞金や登記の失効につながります。本記事では、日本人オーナーの米国法人・LLCに共通する年次コンプライアンスの期限を、カレンダー形式で整理します。
連邦(IRS)関連の年間スケジュール
暦年(1月〜12月)を課税年度とする一般的なケースでの期限です(2026年時点。期限が土日祝日にあたる場合は翌営業日)。
| 期限 | 提出物 | 対象 |
|---|---|---|
| 1月31日 | Form W-2 / W-3、Form 1099-NEC、Form 940(FUTA)、Form 941(第4四半期) | 従業員・業務委託先に支払いをした法人 |
| 3月15日 | Form 1065(パートナーシップ)、Form 1120-S(S-Corp)、Form 1042 / 1042-S(外国人への支払い) | パススルー法人、日本の親会社等に支払いをした法人 |
| 4月15日 | Form 1120(C-Corp法人税)+Form 5472、第1四半期予定納税 | C-Corp、外国人が25%以上を保有する法人、外国人単独所有LLC |
| 4月30日・7月31日・10月31日 | Form 941(四半期給与税申告) | 従業員を雇用している法人 |
| 6月15日・9月15日・12月15日 | 第2〜第4四半期の法人予定納税 | 年間税額500ドル以上が見込まれるC-Corp |
| 10月15日 | Form 1120の延長期限(Form 7004提出時) | 4月15日までに延長申請した法人 |
延長申請(Form 7004)で延びるのは「申告」の期限だけで、「納税」の期限は延びません。見込み税額は4月15日までに納付しておく必要があります。
州(登記州)関連:Delawareの場合
日本人創業者に多いDelaware法人・LLCの年次義務は次のとおりです(Delaware州務省の公表情報に基づく2026年時点の数値)。
- C-Corp:3月1日までにAnnual Report(提出手数料50ドル)とFranchise Taxを納付。税額は授権株式数方式で最低175ドル、Assumed Par Value方式で最低400ドル。期限を過ぎると200ドルの罰金と月1.5%の利息が加算されます。
- LLC:6月1日までに年次税300ドルを納付(Annual Reportの提出は不要)。未納の場合は200ドルの罰金と月1.5%の利息。
- いずれもRegistered Agent(登録代理人)の維持が前提で、通知は毎年12月にRegistered Agent宛てに送られます。
事業実施州の義務:カリフォルニア・ニューヨークの例
登記州とは別に、実際に事業を行っている州(州外登録をしている州)にも年次義務があります。カリフォルニア州では、法人・LLCとも年間800ドルの最低フランチャイズ税(課税年度の4か月目の15日が期限)に加え、Statement of Information(法人は毎年、LLCは2年ごと)の提出が必要です。ニューヨーク州では2年ごとのBiennial Statementの提出が求められます。州ごとに制度が異なるため、州外登録をしているすべての州について期限を確認してください。
2026年時点で不要になったもの
2024年に始まった米国法人透明化法(CTA)に基づくBOI報告は、2025年の規則改正により米国内で設立された法人・LLCについては義務が撤廃されています。詳細は別記事「米国法人透明化法(BOI)報告義務は撤廃」をご覧ください。
よくある質問
Q. 売上がゼロの休眠状態でも、これらの提出は必要ですか?
A. 必要です。Form 1120、Form 5472、州のAnnual ReportやFranchise Taxは、事業活動の有無にかかわらず、登記が存続している限り毎年発生します。活動を終えた法人は正式な解散手続きを取らないと義務が続きます。
Q. 期限を忘れないための実務的な工夫はありますか?
A. Registered Agentからの通知メールが確実に届くよう連絡先を最新にしておくこと、そして上記の期限をカレンダーに登録し、期限の1か月前にリマインダーを設定することをおすすめします。会計事務所に年次コンプライアンスの管理を委託するのも一般的です。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務アドバイスに代わるものではありません。期限や金額は変更されることがあるため、実際の手続きにあたっては最新の公式情報をご確認のうえ、専門家にご相談ください。
まとめ
米国法人・LLCの年次コンプライアンスは、連邦(1月末のW-2/1099、3月・4月の申告)と州(Delawareの3月1日・6月1日、事業実施州の最低税と報告書)の二層構造です。売上の有無にかかわらず毎年発生するため、設立時点で年間カレンダーを作り、Registered Agentからの通知が届く体制を整えておくことが、罰金や登記失効を避ける最も確実な方法です。
