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米国の固定資産税(Property Tax)の仕組みとSALT控除上限:OBBBAで$40,000に拡大した影響

米国で住宅を購入すると、毎年の固定資産税(Property Tax)の負担の大きさに驚く方が多いはずです。地域によっては物件価格の2%を超える水準になり、住宅ローンの返済額と並ぶ大きな固定費になります。一方で、支払った固定資産税は連邦所得税の項目別控除(SALT控除)の対象になり、2025年の税制改正(OBBBA)で控除上限が10,000ドルから40,000ドルへ大幅に引き上げられました。この記事では、米国の固定資産税の仕組み、地域差、評価額への異議申立て、SALT控除上限の新ルール(2026年は40,400ドル)、賃貸物件や非居住者の扱い、そして日本の実家の固定資産税との関係まで、2026年時点の制度で整理します。

米国の固定資産税の仕組み:評価額×税率、決めるのは地方自治体

米国の固定資産税は連邦税ではなく、カウンティ・市・学校区などの地方自治体が課す税です。税額は「課税評価額(Assessed Value)×税率(Mill RateやTax Rate)」で計算され、税収の多くは公立学校の運営費に充てられます。評価額は市場価値に基づきますが、自治体ごとに評価替えの頻度や、市場価値に対する評価割合(Assessment Ratio)、評価額の上昇率に対する上限が異なります。たとえばニューヨーク市では、1〜3世帯の住宅(Class 1)は市場価値の6%を課税評価額とし、評価額の上昇は年6%・5年で20%までに抑えられる仕組みがあります。支払いは年1回から4回の分割が一般的で、住宅ローンがある場合はレンダーが毎月のローン返済と一緒に預り金(Escrow)として徴収し、代わりに納付する形が普通です。

地域差は7〜8倍

Tax Foundationの集計(2022年データ)によれば、住宅所有者の実効固定資産税率(市場価値に対する税額の割合)はニュージャージー州が約2.38%で最も高く、イリノイ州約2.32%、ニューハンプシャー州約2.15%、コネチカット州約1.98%が続きます。最も低いのはハワイ州の約0.28%、次いでアラバマ州約0.43%です。同じ州内でもカウンティや学校区によって大きく異なるため、物件を選ぶ際は価格だけでなく年間の固定資産税額を必ず確認してください。なお日本の固定資産税は標準税率1.4%(都市計画税を含めて最大1.7%)ですが、住宅用地の課税標準の特例(小規模住宅用地は6分の1)などにより、実効負担は米国の高税率地域よりかなり低い水準にとどまります。

評価額に納得できないときは異議申立て(Assessment Appeal)

評価額が近隣の類似物件より高い、あるいは最近の購入価格を上回っている場合、多くの自治体で評価額に対する異議申立てができます。ニューヨーク市では毎年1月に評価通知が届き、Class 1の住宅は3月15日、その他は3月1日までにTax Commissionへ申立てを行います。申立てには類似物件の売買事例や鑑定評価などの根拠が必要です。また、主たる住居に対する減免(ニューヨーク州のSTAR、各州のホームステッド免除、高齢者・退役軍人向け免除など)は申請しないと適用されないものが多いため、購入後に確認しておきましょう。

SALT控除:OBBBAで上限が40,000ドルに拡大

州・地方税(State and Local Tax、SALT)控除は、州所得税(または売上税)と固定資産税の合計を連邦所得税の項目別控除として差し引く制度です。2018年から2024年までは上限が10,000ドルに制限されていましたが、OBBBAにより2025年は40,000ドル、2026年は40,400ドルに引き上げられ、2029年まで毎年約1%ずつ上限が上がります。ただし、修正調整後総所得(MAGI)が2025年で500,000ドル、2026年で505,000ドルを超えると、超過額の30%ずつ控除上限が縮小し、最低でも10,000ドルまで下がります。夫婦個別申告の場合は各金額が半分です。さらに、この拡大は時限措置で、2030年には再び10,000ドルの上限に戻る予定です。

年SALT控除上限(夫婦合算・単身)縮小が始まるMAGI
202540,000ドル500,000ドル
202640,400ドル505,000ドル
2027〜2029前年比約1%ずつ増加前年比約1%ずつ増加
2030以降10,000ドル(縮小規定なし)―

SALT控除を使うには項目別控除(Itemized Deduction)を選ぶ必要があります。2026年の標準控除は単身16,100ドル、夫婦合算32,200ドルなので、固定資産税と州所得税の合計に住宅ローン利子・寄付金を加えた金額がこれを上回る場合に項目別控除が有利になります。ニューヨークやニュージャージー、カリフォルニアなど高税率地域の住宅所有者にとって、上限拡大の恩恵は大きいと言えます。

賃貸物件・ホームオフィス・非居住者の扱い

  • 賃貸物件の固定資産税:Schedule Eの必要経費として全額控除でき、SALT控除の上限とは無関係です。
  • ホームオフィス:自宅の一部を事業に使っている場合、その割合分の固定資産税はForm 8829で事業経費として扱い、残りをSchedule Aで控除します。
  • 米国非居住者(Form 1040-NR):標準控除は原則使えず、項目別控除も州所得税や米国内の寄付金などに限定されます。自宅として保有する米国不動産の固定資産税は控除できません。ただし、賃貸に出してNet Election(Section 871(d))をしていれば、賃貸経費として控除できます。
  • 日本の実家の固定資産税:米国居住者が日本に持つ自宅や実家の固定資産税は、外国の不動産税としてSchedule Aでの控除が認められていません(この制限はOBBBAで恒久化されました)。賃貸に出している場合は賃貸経費として控除できます。

よくある質問

固定資産税はいつの分を控除できますか?

実際に支払った年の控除です。レンダーがEscrowから納付した場合は、年末に送られるForm 1098に記載された納付額を確認してください。Escrow口座に積み立てただけで未納付の金額は控除できません。

高所得で上限が縮小されます。対策はありますか?

MAGIが基準額を超える場合、控除上限は超過額の30%ずつ縮小されます。退職口座への拠出や所得の年度間調整でMAGIを抑える、事業所得がある場合は州のPTE税(パススルー事業体税)の活用を検討するといった方法がありますが、個別の状況に依存するため専門家に確認してください。

家を買った年の固定資産税の精算はどう扱いますか?

クロージング時に売主との間で日割り精算した固定資産税は、買主が負担した部分を買主の控除、売主が負担した部分を売主の控除として扱います。精算明細(Closing Disclosure)を保存してください。


本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務アドバイスに代わるものではありません。実際の判断にあたっては、最新のIRS規則および各州・自治体の規定をご確認のうえ、米国税務の専門家にご相談ください。

まとめ

米国の固定資産税は地方自治体が課す税で、地域差が非常に大きく、住宅の保有コストを左右します。評価額には異議申立ての機会があり、主たる住居向けの減免は申請が前提です。支払った固定資産税はSALT控除の対象となり、2026年は40,400ドルまで控除できますが、高所得者には縮小規定があり、2030年には10,000ドルに戻る予定です。賃貸物件はSchedule Eで全額控除、非居住者の自宅や日本の実家の固定資産税は控除対象外という違いも押さえておきましょう。

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